なぜオリックスは3連勝で26年ぶりの日本一へ王手をかけることができたのか…深謀遠慮の中嶋采配と高津監督の誤算
日本シリーズの第6戦が29日、神宮球場で行われ、オリックスがヤクルトをわずか1安打に抑える完封リレーで抑え込み3-0で勝利、対戦成績を3勝2敗1分けとし26年ぶりの日本一に王手をかけた。中嶋聡監督(53)は先発の山崎福也(30)に5回を任せ、6回からは宇田川優希(23)、平野佳寿(38)、山崎颯一郎(24)、ジェイコブ・ワゲスパック(28)の順で継投を繰り出した。一方の高津臣吾監督(53)は、0-1で迎えた9回に守護神スコット・マクガフ(32)を送りだしたが、また自らの守りのエラーで追加点を許すなど采配は裏目に出た。
1回先頭の塩見に許した1安打だけの完封リレー
まるで中嶋監督の手のひらの上でヤクルトが操られているようだった。
先発の山崎福は、先頭の塩見にセンター前ヒットを許したが、終わってみれば、ヤクルトのヒットは、この1本だけ。しかも、山崎福は、「自分の傾向としては、先頭のバッターに塁に出てもらった方が、いい流れで断ち切ること多い。計算通りです」と言う。
何も調子にのって発言したわけではない。実際、続くベテラン青木のバットをへし折り二ゴロ併殺打に打ち取っているのだから説得力がある。
中嶋監督は「最高のピッチング」と称えた5回無失点の山崎福を70球で降板させると、6回から最強ブルペン陣への継投に入った。6回は宇田川。二死から山田、村上に連続四球を与えたが、“シリーズ男”オスナを三球三振に打ち取った。初球に“大先輩”平野のフォークに触発され覚えたという小さく落とすカウントを取るフォークでストライクを取り、2球目は、大きく落とす2種類目のフォークで空振りを奪う。そしてウイニングショットは高めの威力ある釣り球のストレート。ここも計算通りだろう。
中嶋監督は、宇田川に第4戦では、回跨ぎさせていたが、第5戦はベンチから外して2日の休養を取らせ、この日は、1イニングでスイッチ。7回からは、山崎颯ではなく、先に平野をマウンドに送った。
セ・リーグの某大物OBは、「7回は、6番の中村から始まる下位打線。ベテランの平野はフォークの出し入れでかわすピッチングに変わっているが、下位打線は、平野の技術でかわし、打順がトップに返る8回に160キロ近いストレートを持つ山崎颯で抑え込もうと考えての継投の順番になったのでは。それが見事にはまった」と、中嶋監督の狙いを分析した。
平野はフォークを操って中村、サンタナ、長岡を三者凡退に抑え、8回からは山崎颯が代打・宮本、塩見、青木の3人を力でねじ込み三者凡退。
そして9回はワゲスパックに任せた。第2戦では、同じく3点のリードで迎えた9回に阿部が、代打・内山に同点3ランを浴びて、痛恨の引き分けに持ち込まれている。だが、ワゲスパックは悪夢を再現させなかった。
彼もまた三者凡退。村上は追い込んでからのチェンジアップでスイングアウトの三振に打ち取った。
勝利監督インタビューで中嶋監督は、「自慢のリリーフ陣はいかがでしたか?」と聞かれ「まあ自慢とは思っていないんですが、よく投げてくれています」と謙虚に返した。
中嶋監督は、宇田川、山崎颯、平野、ワゲスパック、阿部と、5人も揃ったブルペン陣の調子や相手との相性を見極めながら短期決戦用の継投マジックを披露している。第5戦のベンチから、宇田川、山崎颯の2人を外したのも、この神宮で2つ勝たねばならないという先の展開を読んでの準備。実に深謀遠慮な采配である。