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辰吉寿以輝が2年9が月ぶりの復帰戦をTKO勝利で飾る。左フックで1度目のダウンを奪った(写真提供・ボクシングモバイル)
辰吉寿以輝が2年9が月ぶりの復帰戦をTKO勝利で飾る。左フックで1度目のダウンを奪った(写真提供・ボクシングモバイル)

なぜ辰吉寿以輝は2年9か月ぶりの復帰戦をTKO勝利で飾れたのか…父・丈一郎のシリモンコン戦に重ねたメンタル…カリスマの感想は?

 1月31日に誕生した第2子で長男の秀弦君が、最前列で奥さんと一緒に自分とそっくりのつぶらな瞳で試合を見ていたが、リングには上げなかった。
「それはトップをとってから。僕もそうやったんで。シリモンコン戦が最初。人見知りで死ぬほど泣いていたけど」
 辰吉が父に初めてリングに上げてもらったのが、WBCのベルトを取り戻したシリモンコン戦だった。
 そこに辰吉が抱く最終目標がある。
「元々、何歳まで(ボクシングをやるとは)決めていない。最終的にチャンピオンになることだけしか決めていない」
 今回はフェザー級で戦ったが「スーパーバンタム級の方が動ける」と、今後は、デビュー戦からのスーパーバンタム級に戻す。おそらく、辰吉が世界を狙える地位まで上り詰めたとき、スーパーバンタム級の世界のベルトは4つともWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者になったばかりの井上尚弥(大橋)がまとめているだろう。
 7月25日のスティーブン・フルトン戦(米国)を配信で見たという辰吉は、「本当に強い。モンスターすぎる」と敬意を示した。
 だが、吉井会長は、「今そんな名前を出したら笑われるけれど、この世界で上を目指す以上、いつかプロとして目標にしなければならない」と“プロ論”を持ち出す。
 そこにたどり着くまでには、気の遠くなるような手順を踏む必要がある。
 まずは年内にランカーと対戦してランキングに復帰し、来年には日本タイトルを手にしなければならない。ケガをする前には、当時、スーパーバンタム級の日本王者だった古橋岳也(川崎新田)との対戦が実現寸前までいったという経緯もある。現在のスーパーバンタム級王者は、同じ関西のグリーンツダ所属の下町俊貴で、彼がベルトを保持し続けていれば、第一ターゲットとなる。
 スーパーバンタム級は、タレント揃いで、OPBF東洋太平洋王者の元K-1王者で無敗の武居由樹(大橋)、デビュー2戦目を9月に控える那須川天心(帝拳)、そしてWBAの同級挑戦者決定戦を控える元2階級制覇王者の亀田和毅(TMK)も君臨している。ただ武居はバンタム級に階級を下げて世界のベルトを狙っており、天心は同じ帝拳グループの同門で対戦は難しい。
 まだ可能性があるとすれば和毅だが、彼も狙いは前WBA&IBF同級王者のムロジョン・アルマダリエフ(ウズベキスタン)を倒した向こう側に待つ“モンスター”井上のベルトで、それしか眼中にない。辰吉は、まずは、そのスーパーバンタム級のトップグループの一人として認められることだろう。
 吉井会長が、冗談交じりに「(和毅と)やる?」と水を向けられた辰吉は、「誰でもウェルカム。ただし、こっちは挑戦者の立場ですが(笑)」と返した。
 山原の大応援団の心さえ、わしつかみにした辰吉の闘争心をむき出しにしたファイトは、チケットを買って見る価値のあるプロのボクシングだった。インサイドでの細かいコンビネーションなど、技術的な進化も見られた。
 ただ3ラウンドには右を一発被弾した。
「思い切りもらった。スーパーバンタム級ではもらったことがないパンチ」
 今後のレベルが上がる戦いの中では、そういう粗さやポカは、命取りになる。
 辰吉も「もっとスマートな戦いもしていきたい」と反省も口にした。
「もう27(才)なんで。あんまりモタモタしている時間はない」
 辰吉寿以輝のプロ戦績は15戦14勝(10KO)1分け。本当の勝負が始まった。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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