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阪神の大竹が“カープキラー”の本領を発揮して10勝目。打っては奇策のバスターを決めて自らを援護した(資料写真・黒田史夫)
阪神の大竹が“カープキラー”の本領を発揮して10勝目。打っては奇策のバスターを決めて自らを援護した(資料写真・黒田史夫)

“神采配”連発の岡田監督は「新井カープに負けない」ことを予告していた…なぜ阪神は7連勝で広島に事実上の“引導”を渡しマジックを「7」に減らすことに成功したのか?

 7回からは盤石の小刻みリレー。二死から佐藤に守備のミスが出て、打ち取った田中の当たりがショートの後ろにポトリと落ちて1点を失い、代打デビッドソンがコールされると、岡田監督は石井を投入した。石井は空振りの三振に打ち取り、そのまま回を跨いだ。二死を取り、左の野間を迎えたところで今度は桐敷。四球を与えたが、小園を三振に斬ってまた回跨ぎで9回のマウンドへ。桐敷が二死一、二塁にされ、セーブシチュエーションになると、デビッドソンの打席で守護神の岩崎にスイッチした。岩崎は、きっちりセカンドゴロに抑え、これで31セーブ目。中日のマルティネスを抜き、最多セーブ争いの単独トップに立った。「タイトルを取らせてやりたい」という岡田監督の憎らしい采配である。
 広島との直接対決に連勝してゲーム差は10に開き、マジックは「7」になった。
 スポーツ各紙の報道によると、岡田監督は、大好きなゴルフのハンディに重ねて「カウントダウンはまだやろ。やっぱりシングルでも片手以下やろ。8とか9は弱いで」とジョークを飛ばしたそうだが、事実上、ライバルに引導を渡した。

 8月31日の時点では広島とは5ゲーム差だった。
 8月28日の巨人戦から3連敗。8月30日の横浜DeNA戦では、勝ちゲームを岩崎が1イニング2被弾というショッキングな形で落とし、一方の広島は、引き分けを挟んでの4連勝と追い上げてきていた。だが、ヤクルト戦に備えて東京に移動した岡田監督に焦りなどまったくなかった。
「ここまでやってきた野球が全然ちゃうやん」
 それが岡田監督の答えだった。
 余裕でも自信でもない。まして驕りでもない。2023年の戦いへの確固たる目標を設定して、秋季キャンプをスタート。ここまで11か月間、積み重ねてきた“準備の違い”が、岡田監督に、そう言わせた。
「もたんよ。もったらたいしたもんやけど。9月の戦いというのは反動がくるもんなんや」
 2008年に巨人に13ゲーム差をひっくり返された。9月の戦いの怖さを岡田監督は身を持って知り、10年に及ぶ評論家時代も「9月に弱い阪神」をずっと見てきてOBとして歯がゆい思いをしてきた。だからこそ「9月に強い阪神」を作るための長期ビジョンをキャンプから抱き実行してきた。先発は6人ではなく8、9人作る。調子が悪くなれば、青柳でも西勇でも2軍に落とし、1年間、戦うための先発陣を整備してきた。前監督時代は「JFK」を確立させたが、ブルペンも最低6人から8人を用意して、休養を与えながら無理せずに回し、若手には経験を積ませ「勝負の9月」に本当に使える戦力を見極めていった。

 

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