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2大会ぶり4度目Vの青森山田。正木監督を囲んで歓喜の記念撮影(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
2大会ぶり4度目Vの青森山田。正木監督を囲んで歓喜の記念撮影(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

「継承と革新」Jリーグ転身の黒田氏からバトン受けた正木新監督がロングスロー批判をものともせず青森山田を頂点に導けた理由とは?

 決勝で奪った3ゴールも、すべて異なる形から生まれている。
 前半33分の先制点は、右サイドからMF杉本英誉(ひでたか、3年)が送ったクロスを、冷静な胸トラップからMF福島健太(3年)がゴール左隅へ決めた。後半15分の勝ち越しゴールは、GK鈴木将永(しょうえい、3年)のゴールキックから短いパスを2本、それもダイレクトでつないで中央を突破し、抜け出した米谷が流し込んだ。
 今大会5ゴール目を決めて、市立船橋(千葉)のFW郡司璃来(3年)と並んで得点王になった米谷が、正木監督が求めるサッカーをこう表現する。
「1点を取っても、さらに2点目、3点目を取りにいく」
 ダメ押し点となった同25分のオウンゴールは、近江の右コーナーキックのこぼれ球を杉本が奪取。すかさず発動させたカウンターが誘発した。初戦だった昨年大晦日の2回戦からすべて中1日で戦うこと5試合目。しかも後半途中の疲れている時間帯にもかかわらず杉本の後をMF川原良介(3年)、小沼、米谷と湧き出るように近江ゴールへ迫っていった。
「カウンターの勢いとスピード、そして人数。あれがウチの伝統です。冬場に妥協せずにトレーニングをしてきたことがこの結果を生んだ。さすがだと思います」
 正木監督が目を細めれば、3度目の出場で強豪校を連破して初めて決勝へ進み、その勢いを持って頂点を狙った近江の前田高孝監督(38)は王者に脱帽した。
「ロングスローやロングボールも脅威ですけど、前線の選手たちがとにかく上手い」
 同点に追いつかれた直後には、山本が選手全員を集めて円陣を作った。
「守備の圧力が弱くなっていたので『前からもっとプレスにいこう』ということと、絶対に自分たちが勝つのはわかっていたので『焦らずにいこう』と言いました」
 この光景を見て、正木監督は勝利を確信したと目を細める。
「選手たちはまったく動揺していなかったし、逆に引き締まった感じの顔つきだったので。なので、選手交代を含めて、すぐに何かを変えようとは考えませんでした。一番は黒田前監督が作ってきてくれたベースがあるので、自分はそこにただ乗らせていただいているだけですけど、一度優勝したことでもっと欲が出てきそうですね」
 町田をJ2優勝と初のJ1昇格へ導いた黒田前監督がスタンドで見守る眼前で、圧倒的な強さとともにつかんだ新体制での選手権初制覇。正木監督は「青森に帰ったら、まず駐車場の雪かきをしないと。監督として優勝しても、そこは変わらないですね」と苦笑しながら、小沼らが中心となる新チームへ早くも思いを巡らせていた。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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