• HOME
  • 記事
  • 野球
  • FAの人的補償は本当に「悪魔のシステム」なのか…和田毅が浮上して甲斐野で決着した西武とソフトバンクの“人的補償騒動”の波紋
西武がFA山川穂高の人的補償としてソフトバンクから指名したのは侍ジャパンにも選出されたことのある甲斐央(写真:Penta Press/アフロ)
西武がFA山川穂高の人的補償としてソフトバンクから指名したのは侍ジャパンにも選出されたことのある甲斐央(写真:Penta Press/アフロ)

FAの人的補償は本当に「悪魔のシステム」なのか…和田毅が浮上して甲斐野で決着した西武とソフトバンクの“人的補償騒動”の波紋

 里崎氏は「人的補償はあるべき。人的補償をなくす、または見直すにはFAで選手が流出している数の多い球団が声をあげないことには難しい。つまり過去のデータで流出選手の多い西武、日ハム、横浜DeNA、オリックスあたりの球団が揃って“やめましょう”と言わない限り、獲得するケースの多い球団がなくそうと言っても、戦力の不均衡が起きる可能性が高まるだけです」という意見。
 過去のFA流出のトップは西武の17人で、日ハムの12人、オリックスの11人と続く。「流出選手の多い球団の意見が尊重されるべき」との里崎氏の主張は筋が通っている。代替案もないまま人的補償を廃止しても資金力のある球団に戦力が偏るだけになるだろう。
 ただ「微調整は必要だと思う」と付け加えた。
「今回、広島がオリックスにFA移籍した西川龍馬の人的補償で2年目の日高暖己を獲得しましたが、投手育成で評判のあるオリックスが日高のために組んできた育成プランはどうなるんだって話ですよね。やはりルーキーだけでなく2年目までの選手は無条件でプロテクトに入れる。今の枠を28人から32人に増やすなどの見直しは必要かもしれません」
 それでもプロ野球選手会は人的補償の廃止を強く訴えている。
 里崎氏は、「もし人的補償を廃止するのであれば、FA制度そのものを大胆に変革する必要がありますよ」とも言う。提案するのは2つの代替案だ。
「ひとつはメジャー方式の“自動FA”。FA宣言しなくとも資格年数を満たした選手が全員自動的にFAになれるというものです。その代わり“自動戦力外”も合わせて導入すること。複数年契約を結んでいない選手は、オフに全員が契約切れで“戦力外”になるわけですから、大きなリスクもありますよね」
 そして、もうひとつのパターンが、現行の制度のまま人的補償の代わりにドラフトの指名権を譲渡するという案だ。
「Aランクは1位、Bランクは2位のドラフト指名権を譲渡する方法です。つまり今回のケースであれば、西武は1位でソフトバンクの分を合わせて2人を獲得できるわけです。ただ現状の1位指名はウェーバー方式ではないので、この場合、1位も完全ウェーバーにすることが望ましいでしょう。ドラフトも含めた制度改革となると簡単ではありません」
 1993年に導入されたFA制度は2003年、2008年と2度の改正を経て今回で20年目の節目を迎えていた。ソフトバンクの失態で起きたとも言える今回の“人的補償騒動”は、この制度の転機を浮き彫りにしたのかもしれない。
(文責・RONSPO編集部)

関連記事一覧