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井上尚弥がラスベガスで逆転の8回TKO勝利(写真・山口裕朗)
井上尚弥がラスベガスで逆転の8回TKO勝利(写真・山口裕朗)

大橋会長が明かす井上尚弥のラスベガス逆転TKO勝利の壮絶舞台裏「安全策の判定を狙わずに倒しにいった」…2回のダウンは「ネリ戦より深くパンチが入っていた」

 T-モバイルアリーナには8474人のファンが詰めかけた。「尚弥が出てきた時が一番凄い歓声だった。ブーイングもあるのかなと思ったが、井上の声援が多かった。ホームみたいだった」という。最終調整を行ったジムにも出待ちのファンが長蛇の列を作り、公開練習や公式会見でもメディアを含め「凄まじい人でびっくりした。日本でだってない(光景)」と大橋会長は熱狂ぶりを伝えた。
 4年ぶりに上陸する米国の期待感は想像以上だったが、井上にプレッシャーを感じている様子は見えなかった。
「凄いと思うのがそこ。かえってやる気になってくる。舞台がでかいほどね」
 だが、一方で課題も浮き彫りになった。左フックを浴びたディフェンスの問題に加えて、中盤以降は、珍しく腰が浮き、打ち疲れもしていた。フィジカルに優れたボクサーがガードを固めながら前に出て勇気を持った攻撃を怠らずに徹底して打ち終わりを狙うという“モンスター狩り”の手本も示された。
 大橋会長は「課題も見つかったしそれを修正していくのが第一」と、しながらも「ガス欠を心配したが、インターバルで回復していた」とし、カルデナスが示した戦術及び井上の“弱点露呈説”についても全面否定した。
「全然やりやすいんじゃないの。かえって戦いやすい」
 防戦一方の相手よりも、殴り合いの勝負にくる相手の方がモンスターには「噛み合う」との判断である。
 次戦は9月14日に名古屋の1万7000人収容の新設アリーナ「IGアリーナ」で元WBA&IBF王者のアフマダリエフを迎え討つことが決定している。
 大橋会長は、傷ひとつない試合後の井上の写真を見せながら「綺麗な顔をしているでしょう。ダメージはない。4か月以上もある。通常通りのペース」と、予定通り開催される方向であることを明かした、
 そのアフマダリエフは5月30日にメキシコで元世界ランカーのルイス・カスティーヨ(メキシコ)と前哨戦を行うことが明らかになった。31勝(20KO)6敗の戦績を持つカスティーヨは、2023年2月に大阪でこの5月24日にIBF世界フェザー級王座に挑戦する亀田和毅(TMK)に5回TKO負けしている。しかも、1年半リングから遠ざかっていて、万が一にもアフマダリエフが負ける可能性はないだろう。大橋会長に負けた場合も、井上戦があるのか?と聞くと「わからない」と困惑した返答。この試合に「(注目は)何もしていない」という。
 またアフマダリエフの参謀は、カルデナスと同じジョエル・ディアス氏。あのマニー・パッキャオ(フィリピン)に土をつけた元2階級制覇王者のディモシー・ブラッド・ジュニア(米国)を育てた名トレーナーである。どんな戦術を授けるか不気味ではあるが「不気味さ?ないですよ」と大橋会長は一蹴した。
 それもすべては井上への信頼の裏返しだろう。
 また共同プロモーターのトップランク社の評価も急上昇。
「もっと名前のある選手とやれば凄いことになる」と米国への再登場を要望されたという。大橋会長も井上本人も乗り気だが、9月のアフマダリエフ戦後も、12月にサウジアラビアでWBA世界フェザー級王者ニック・ボール(米国)へ挑み、来年5月に東京ドームでWBC世界バンタム級王者、中谷潤人(M.T)とのスーパーマッチと予定が詰まっていて米国で再び試合をするとしても来夏以降になりそうだ。

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