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井上拓真がダウンを奪われるも那須川天心を返り討ちにした(写真・山口裕朗)
井上拓真がダウンを奪われるも那須川天心を返り討ちにした(写真・山口裕朗)

井上尚弥を「ドキっとさせた」ダウン危機から拓真が那須川天心を3-0判定で返り討ち…1か月半前に目をカットする極秘アクシデントを乗り越えた…「これが最後。3度目対戦はない」

 最後まで会場の声援は「拓真コール」と「天心コール」に二分されていた。
「相手サイドに負けないくらいの応援をしてくれていると感じたからこそ、最後まで絶対負けないぞという気持ちで戦うことができた」
 そうファンへ感謝した。
 大橋秀行会長は、「天心選手が研究してきた。(拓真が)ダッキングする時に左アッパーを合わせてきた。倒された左ストレートは葛西トレーナーが得意とする真っ直ぐなストレート。ここできたかと。ダウン意外は完璧だった」と、天心サイドの戦術に敬意を表した。
 実は大ピンチのアクシデントがあった。
 本格スパーがスタートした1か月半前。アマチュアボクサーとのスパーで目の上をカットした。グローブの紐の部分が当たったのだ。縫うまでには至らなかったが医者のOKが出るまでスパーリングが約1週間封印された。セミファイナルのIBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦で、西田凌佑(六島)に勝利したサム・グッドマン(豪州)が井上尚弥との世界戦が決まっていたものの2度の目のカットで延期となり、結局、中止となった。絶対にその悪夢を拓真が繰り返してはならない。カットの再発に細心の注意を払う中でのトレーニングだった。
「スパーリング数は減ったけれど、その分、内容が濃くなった」と真吾トレーナー。
 しかもその情報は帝拳陣営にも漏れ伝わっていた。
 水面下で情報戦も始まっていた。
 通常、目の上のカットは3週間もあれば完治するが「もしかするとそこを狙ってくるかもしれない」ということまで想定して準備を進めた。
 それらの懸念は杞憂に終わり、天心はフェアな戦いを挑んできたが拓真陣営は大きなピンチを乗り越えて返り討ちを果たしたのである。
 試合後のリング上で拓真は「天心選手が他の団体のベルトを取れば、第3戦もあるんじゃないですか」と3度目の対戦の可能性をにおわせた。「兄に並ぶ」4団体統一を目論む拓真にとって、天心がそのうちのひとつのベルトを持っていれば避けては通れない。
 しかし、その後の記者会見では「ないかもしれない。『これで最後だ』と言われたんでこれで最後です」とラバーマッチを否定した。
 大橋会長も「3度目はない」と言い放った。
 次なる狙いはサウジアラビア「リヤドシーズン」日本大会のリングだ。日本初上陸のビッグイベントは、来年2月なら「みずほPayPayドーム福岡」、3月なら「東京ドーム」で、井上尚弥と3階級制覇王者で、WBA世界バンタム級スーパー王者のジェシー“バム”ロドリゲス(米国)のスーパーマッチをメインに行われる予定だが、その同じリングで拓真が防衛戦を行い、共演する可能性があるという。
 そこで実現するかどうかは不明だが、拓真の統一戦のターゲットのひとつが11月下旬に都内で行われるWBA世界同級王者の増田陸対堤聖也戦の勝者だ。もし休養王者を剥奪されて1位降格となった堤が王者に返り咲けば、2024年10月に堤に敗れてWBA王座から陥落した拓真にとっては、統一戦&リベンジマッチとなり、また高いモチベーションでリングに上がることができるだろう。
 拓真は「いまのところ何も考えていない。あとは会長と父に任せて自分は練習するだけ」としかコメントしなかったが、偉大なる兄に肩を並べるスーパーチャンピオンにまた一歩近づいている。

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