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1階級上のWBA世界ライトヘビー級王者のドミトリー・ビボル(左)に挑んだスーパーミドル級の4団体統一王者サウル”カネロ”アルバレス(右)だったが0-3の判定負け(写真・AP/アフロ)
1階級上のWBA世界ライトヘビー級王者のドミトリー・ビボル(左)に挑んだスーパーミドル級の4団体統一王者サウル”カネロ”アルバレス(右)だったが0-3の判定負け(写真・AP/アフロ)

なぜカネロのLヘビー級挑戦は失敗したのか…判定負けの”番狂わせ”で9月のゴロフキン戦は消滅してビボルとの再戦へ

ジャブから、ワンツースリーフォーまでつなげるビボルのコンビネーションブローと手数にカネロが圧倒されはじめた。7ラウンドにはカネロの打ち終わりにビボルがカウンターを合わせて激しい打ち合いに。思わずカネロが苦笑いを浮かべるほど。8ラウンドには押されてカネロがヒザからキャンバスに崩れ落ちてスリップダウンにもかかわらず場内は悲鳴に包まれた。

 9ラウンドに入ってカネロは反撃に転じるが、強打の打ち疲れか、ややパワーとスピードに陰りが見えはじめた。ビボルは、そこを見切ったのだろう。11ラウンドには、頭をつけて接近戦を挑む。

 イライラが募ったのか。カネロは左肩でビボルを持ち上げる“プロレス技“で応戦する始末。どちらもダウンにつながるような決定的なクリーンヒットはなかったが、米の専門機関のカウントによるとトータルのパンチ数でもカネロが495発(ボディが43)を放ち、有効打が84、ビボルが710発(ボディが15)を放ち、有効打が152と王者が大きく上回った。

 試合後の会見では、カネロは一転して「俺は勝ったと思う」とジャッジに不満を訴えた。

「4から5ラウンドは取られたのかもしれないが、絶対に負けていない。最終ラウンドで少し疲れはあったが、ジャッジは取るべきでないパンチを取ることがよくある。俺が相手のパンチをブロックしていても当たっていると判断されたりね。ただライトヘビー級の体重差の問題で100%の力が出せなかった」  

カネロは2019年11月にも1階級上のWBO世界ライトヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(ロシア)に挑戦して11ラウンドKO勝利した経験があるが、今回はビボルとの体格差は歴然だった。加えて、その高いディフェンス力と、下がらず連打で応戦してくるビボルのメンタルと戦略に対して、カネロの攻撃はワンパターンで、壁を乗り越えることができなかった。

 米専門メディア「ボクシング・シーン」によると、カネロに唯一黒星をつけたメイウェザーも、”階級差の壁”が立ちはだかることを予想していたようで、この試合では、ビボルに1万ドル(約130万円)を賭けて4万2500ドル(約556万円)を儲けたそうである。

 それでもスポーツ専門局のESPNが「恥ずべき戦いではない」と評するなど1階級上の王者に挑んだカネロのファイトに厳しい論調はなかった。

 さて気になるのがカネロの今後だ。当初は、日本で村田を9回TKOに葬ったゴロフキンと9月17日にスーパーミドル級で3度目対決を行うプランを立てていたが、方向修正を余儀なくされた。

 試合後、ビボルは「申し訳ないが、ゴロフキンと対戦するプランはたぶんなくなるだろう」と、自らの勝利で予定されていたゴロフキンとの3度目対決がご破算になりそうなことを皮肉った、

 実は両者には再戦条項があり、リング上でアナウンサーに「リマッチしたいか?」と問われたカネロは「再戦したい。これで終わらせたくない」と即答。

 アナウンサーがビボルにも意見を求めると、「再戦に問題はない」と答えた。

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