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赤井英五郎の右アッパーが炸裂。TKO勝利で東日本新人王の初戦を突破(写真・山口裕朗)
赤井英五郎の右アッパーが炸裂。TKO勝利で東日本新人王の初戦を突破(写真・山口裕朗)

なぜ”浪速のロッキー”赤井英和氏の長男・英五郎はプロ2戦目でTKO勝利を飾れたのか…負けて学んだ教訓と父の現役映像の刺激

デビュー戦では、わずか144秒でTKO負けを喫した。課題だったガードが無防備に下がり、気持ちだけが先走って思ったように体が動かずパンチを繰り出すことができなかった。今回は練習でマススパーと呼ばれる、ガチで打ち合うのではなく「手を出すため」のリズムを作り、軽くタイミングを合わせるスパーリングを多く取り入れた。その練習が2ラウンドの立て直しに生きた。

   試合のなかったこの間、映画監督として父をモデルとしたドキュメンタリー映画「AKAI」を作った。父の現役時代の映像を使い、その後の人生を新型コロナ禍の中を過ごした現在の家族の日常までを追いかけた作品。米ウィディア大時代に学んだ映像技術を生かし、「お世話になった人へ手紙を書くようなつもりで作った」とパソコンひとつで編集し完成させた。9月9日に「新宿ピカデリー」など全国の劇場でのロードショーがスタートする。

 現役時代の映像としては、父が初めて世界挑戦してTKOで敗れたWBC世界スーパーライト級王者のブルース・カリ―(米)戦、そこから再起し2度目の世界への前哨戦のはずが、再びKO負けをして意識不明となり脳挫傷を負い手術、引退どころか生死をさまよった大和田正春戦の2試合をクローズアップした。否が応でも、父のボクサー時代の映像を「十分に見た」という。

「普段は父とはほとんど喋らないので(笑)試合の後や前のインタビューが新鮮だった」  家族に試写会を開いたが、父は酔っぱらって寝ていた。

「僕もそう。負けた試合は見たくないものなんです」

 父は2度の敗戦から2度立ち上がった。映画「どついたるねん」で俳優デビューして第二の人生を切り拓いた。英五郎は、その父の生きざまに再起に向かう今の自分を重ねたのかもしれなかった。

「納得がいかないので、辞める(引退)はなかった。次にチャンスがくるまで気持ちを切り替え、今何ができるかを考えていた」

 2度目の挑戦となった東日本新人王予選の初戦を突破した。9月27日に行われる準決勝の相手は、元K-1戦士の左右田だ。左右田は、すでに6月10日に1回戦を戦い、ダウンを喫したものの逆転KOで勝利した。赤井は、あえてその試合に足を運ばなかった。

「相手のボクシングに合わせるのではなく、自分のボクシングに合わさせること。直せるところはいっぱいある。コンパクトに。練習で何ができていないかに取り組んでいきたい」

 父は、こうアドバイスを送る。

「打ち合うんじゃなくジャブを生かした基本が大事。英五郎に優るものがいない強いパンチをいかに当てるか。細かいボクシング。未来はわからないが、次も持っているものを出し切れる試合をやってもらえればいい」

 赤井は、2018年全日本社会人選手権同級優勝など、14戦8勝6敗のアマチュア戦績を持っているが、ボクシングを始めたのは、米留学していた20歳の頃で、8年目。しかもアキレス腱や手首の靭帯を断裂する怪我によるブランクもあった。

 まだ発展途上でスキルは十分ではない。テクニック勝負であれば、魔裟斗仕込みのキックの実績を持つ左右田にはかなわないだろう。

 だが、ミドル級は何かが起きる階級である。150キロを超える巨体とぶつかりあってきたアメフトで鍛えたフィジカルで、どこまで対抗し、父の折り紙付きの一撃を元K-1戦士に当てることができるかどうかがカギを握る。  そして、なにより、この2戦で赤井は進化した。

 ”浪速のロッキー”ジュニアは、こう言い切った。

「自信はついた。ボクシングはパンチを当ててなんぼの競技。パンチを当てられたのでKOできた。大きな一歩になった」

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

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