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オリックス吉田正の劇的サヨナラ弾の裏に何があったのか…2勝2敗1分のタイに並ばれたヤクルトの選択ミスとマクガフの誤算

 日本シリーズの第5戦が27日、京セラドーム大阪で行われ、オリックスが吉田正尚(29)のサヨナラ本塁打でヤクルトに6-4の劇的なサヨナラ勝ち、対戦成績を2勝2敗1分けのタイに戻した。今シリーズ打率1割台と低迷していた4番の吉田正は、この日、1試合2本塁打の完全復活。舞台は29日から再び神宮へ移るが、もし3勝3敗1分けで並んだ場合は31日(月)に同球場で36年ぶりの第8戦が行われることになる。

「感無量です」

 

 日本一美しいフォロースルー。
 吉田正はバットを放り投げてから右手を突き上げた。9回の土壇場で、守護神マクガフのミスを誘って、4-4の同点に追いつき、さらに二死一塁。主将で4番の吉田正が、マクガフの「落ちなかった」139キロのスプリットをフルスイングした打球は、京セラドームの5階席の一番上まで飛んだ。劇的なサヨナラ2ラン。一塁を回って両手を上げた吉田正は、ナインが待ち受けるホームに後ろ向きにジャンプして飛び込み、そのままひっくり返って転倒。手荒い祝福を受け、スポーツドリンクでびしょ濡れとなった。
「感無量です」
 ヒーローインタビューで吉田正の白い歯が光った。
 中嶋監督も興奮していた。
「本当に凄い試合になりました」
その瞬間、興奮と同時に「終わったなあ」と安堵感に包まれた。
 ヒーローの吉田正に声をかけていたが「何を言ったか覚えていない」という。 
 お立ち台で吉田正は、「西野選手の気迫のつなぎでなんとか打席が回ってきました。二死一塁でしたし、自分のスイングを心掛けて打席に入りました」と、執念の同点劇を演出した西野を称えた。
 短期決戦はミスが生まれた方が負ける。
 1点を追う9回に中嶋監督は4回にタイムリーを放っている9番打者の若月に代えて安達を打席に送った。マクガフは制球に難があり、マウンドに立ってみなければわからない傾向にある。まして昨年の日本シリーズ第1戦で2点のリードを守れずに負け投手となっている。ストライクが入らない。安達は四球を選び、続く途中出場の福田がバントを決め、得点圏に走者を送って打席には、この日、4打数ノーヒットの西野が入った。
 2球続けてマクガフのスプリットに翻弄されて、連続の空振りで簡単に追い込まれた。だが、見送ればボールの低めの球に食らいつきなんとかバットに当てた。打球はマクガフの正面へ。だが、この簡単なゴロをマクガフがグラブに当てて弾き、あわててマウンドを降りて、素手で拾って一塁へ送ったが、焦って体勢が崩れていたために送球がそれた。その間に安達が二塁から一気にホームイン。オリックスの執念が守護神のミスを誘い、負ければ王手の崖っぷちのゲームで土壇場で同点に追いついたのである。
 今季38セーブの燕の守護神はその場にしゃがみこみ頭を抱えた。
 続く中川圭は三振に倒れたが、その間、オリックスベンチは動かなかった。一塁を空ければ吉田正との勝負は避けられる。中嶋監督は、そう考えたのだろう。
 セリーグの某大物OBが、こう解説した。
「サヨナラの場面。二死で吉田正には一発の危険性があるのだから、ヤクルトベンチは、吉田正か、次の杉本と勝負かの選択をもっと冷静にすべきだった。吉田正には、歩かせていいくらいの気持ちで徹底して厳しく攻めるべきだったが、中途半端だった。マクガフの制球に不安があり、厳しくいけないのであれば、次の杉本の状態はよくないのだからたとえサヨナラの走者を得点圏に進めることになっても吉田正との勝負を避けても良かったと思う」

 

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