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オリックス吉田正の劇的サヨナラ弾の裏に何があったのか…2勝2敗1分のタイに並ばれたヤクルトの選択ミスとマクガフの誤算

 初球は、インコースへコースギリギリのストレートから入ったが、これをストライクとジャッジされたことで、バッテリーに“欲”が出てしまったのかもしれない。吉田正は5回に3-2とする勝ち越しのシリーズ初本塁打をバックスクリーンに叩き込んでいた。しかも、昨年の日本シリーズの第1戦にもマクガフからサヨナラ二塁打を放っている。打率は9回の時点でまだ.188だったが、シリーズを通じて吉田正には7四球。徹底した“四球攻め”で主砲を眠らせていたのに最後の最後でヤクルトは中途半端な勝負をしてしまった。
 日本シリーズのサヨナラ本塁打は、2018年の柳田(ソフトバンク)以来17人目だが、オリックスでは初。サヨナラ弾を含む1試合2本塁打は、2003年の金本氏(阪神)以来、史上2人目となる。

 吉田正の今季成績は、打率.335(リーグ2位)、得点圏打率.367(同2位)、21本塁打(同4位)、88打点(同2位)だが、チーム得点への貢献度を示すOPS(出塁率+長打率)は1.008でリーグトップだ。4番としての存在感を示す数字である。
 吉田正の何がどう凄いのか。
 前述のセの大物OBは日本一美しいフォロースルーに秘密があるという。
「後ろが小さく、前が大きいのが理想だが、吉田正のバッティングはまさにそれ。なぜフォロースルーが大きいかと言えば、右手の引き腕をうまく使えているからだ。バットスイングの軌道は、ダウン、レベル、アッパーだが、レベルの時間が長く、アッパーのところで右腕が利き、大きなフォロースルーを作るので、いわゆるボールをバットに乗せるという時間ができる。だから吉田正の打球にあれだけの角度がつき飛距離が出るのだ」

 シーソーゲームだった。
 中嶋監督は「いろんなミスとかありました。最後、こういう形になれたのはよかったですけども、もう一回締め直します」とも言った。
 5回には、先発の田嶋が無死一、二塁から村上を一塁ゴロに打ち取り、3-6-1とボールが渡ったが、一塁カバーに入った田嶋はなんでもない送球を落球。一死一、三塁のピンチを残してしまったのだ。記録は村上の併殺打と田嶋の失策。仕掛けの早い中嶋監督は、ここで比嘉にスイッチした。
 今シリーズすでに10本のヒットを放っている絶好調のオスナを比嘉は、低めのスライダーでショートゴロに仕留める併殺でピンチを脱出した。日本シリーズでは史上初となる1イニング2併殺打の珍しい記録。39歳の変則ベテラン右腕のワンポイント救援の成功が、その裏の吉田正の勝ち越しアーチを生み出したのである。

 

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