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引退会見で村田諒太が4月8日デビュー帝拳ジムの後輩の那須川天心から花束をもらう
引退会見で村田諒太が4月8日デビュー帝拳ジムの後輩の那須川天心から花束をもらう

引退した村田諒太はボクシング界に何を残し彼は第二の人生で何をするのか…海外活動?政治家?学者?起業?スポーツキャスター?

 だが、村田が興味を持っているのはそこではない。会見でも、その話をしていたが、アスリートのセカンドキャリアについて何らかのアクションを起こす構想も練っている。様々な経営者との交流もあり、新規ビジネスを立ち上げての起業家の可能性もある。
 また哲学、宗教学など学問の探求心が強く、どこかの大学の研究室に入って、真剣に取り組みたいとの願望もある。そのうち博士号を取得するかもしれない。もちろん大好きなボクシングに一線を引く気もない。
 中学生の頃から見ていたWOWOWでの解説は継続する方向で、帝拳OBとしてジムへの恩返しもしたい。すでに昨年はWBA総会に出席して帝拳の“代行”として”外交デビュー”も果たした。海外では、オスカー・デラホーヤや名ボクサーがプロモーターに転身する例は少なくないが、ジム経営や、本田明彦会長の後を引き継いでのプロモーター業、トレーナーとして選手を指導することについては消極的。
「会長にしかできないし僕がやるなんておこがましい。そういう意志(本田会長の後継)はない。指導者に興味はないことはないが、1対1(トレーナー)の役割に入るべきではなく、興味があるのは、もっと全体的なところ」。これもまた村田らしくていい。
 村田は「したいこととできることは違う」と言い「ピラミッドのトップに立った人間には横がない。他のピラミッドのトップに飛び移るのは大変だし失敗が多い。ピラミッドの一番下から一から一歩一歩上がっていきたい」とこれからの人生を比喩した。

 質疑応答が終わるとファンへのメッセージを求められ、高額のチケットを買ってくれたファンに感謝の意を伝える際に涙ぐむシーンも。そしてビデオメッセージが流された。
 通常、この手のメッセージは会場を沸かせる著名人から始まるものだが、闘病するファンを勇気づけようと訪ねて以来、親交のあった長崎のファミリー、やんちゃだった中学時代の村田にボクシングを薦めた北出忠徳先生、南京都高ボクシング部の先輩、後輩、そして武元先生の遺族らが、著名人よりも先に登場した。
「最後までなんきん(南京都高の略)か」
 村田は、そう苦笑していたが、どれだけビッグネームになろうと、驕ることなく、彼を愛した人たちを、彼もまた愛し続けた。漢の人、村田の愚直なボクシング人生を象徴するいいビデオメッセージだった。
 村田にとって良き後輩であり、階級こそ違えど、日本ボクシング界を共に引っ張る良き同志でもあった井上尚弥も華を添えた。
 最後に花束贈呈が行われ、スポーツ庁長官の室伏氏、日本ボクシングコミッショナーの萩原実氏、高校とジムの先輩である元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏らが登壇し、一番最後に、4月8日にボクシングデビューする帝拳所属の那須川天心がプレゼンテーターを務めた。村田は、マイクを持ち、帝拳の後輩達にエールを送った。
「那須川君が4月8日に試合をします。注目するボクサーの天心以外にも帝拳には素晴らしいボクサーがたくさんいます。世界戦に負けたけれど岩田翔吉も、村田昴も、若い子では高見亨介もいます。みんなして那須川天心に負けるな、那須川だけじゃないんだぞ、メインイベントを張るのは俺たちだ、とライバル意識をもって、帝拳ジム、日本ボクシング界、スポーツ界を盛り上げていってほしい。盛り上げるために僕にできることがあれば手伝わせて欲しい」
 心優しき村田の言葉。
 いい夢を見せてくれてありがとう…。
 1時間を過ぎる会見が終わり入口付近で関係者と話し込んでいた村田をみかけた。筆者は馬鹿話はせず、心の中で、そう語りかけた。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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