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中日の若き4番打者である石川の「怠慢走塁」と阪神のノイジーの“絶品”補殺が明暗を分けた(資料写真・黒田史夫)
中日の若き4番打者である石川の「怠慢走塁」と阪神のノイジーの“絶品”補殺が明暗を分けた(資料写真・黒田史夫)

中日と阪神の明暗を分けた石川の“怠慢走塁”とノイジーの“絶品イチロー級”補殺…その背景にある首位虎と最下位竜の“違い”とは?

 石川の怠慢走塁がクローズアップされることになったのは、ノイジーの補殺がすべてだった。これで今季早くも「4」。ヤクルトの濱田に並び外野手ではリーグトップだ。
 立浪監督は、目の前の打球に対しての細川のスタートに疑問を呈したが、セ・リーグでゴールデングラブ賞獲得経験のあるプロ野球OBは、「細川のスタートもシャッフルリードも極端に遅れたというわけではなかった。ノイジーのクイックスローを褒めるべき。肩はとうてい及ばないが、打球を捕ってからベースに届くまでのトータルの秒数で言えば、イチロー、新庄よりも上かもしれない」と、ノイジーのプレーを称賛した。
 ノイジーは元々は三塁手が本職。メジャーではショートの経験もあり内野手の感覚で打球を処理するので、捕球してから送球までの時間が驚くほど速い。そのノイジーのクイックスローが一塁走者の細川に頭に最初から入っていたかどうか。一塁コーチャーズボックスの荒木コーチが念を押して確認していたかどうか。
 明暗を分けたプレーの背景には様々な理由が存在する。
 15年ぶりに阪神の監督に復帰した岡田監督がチームに根づかせたのが、守備、走塁への意識向上である。中野を遊撃から二塁にコンバートさせ、遊撃は木浪と小幡に競わせ、大山一塁、佐藤三塁の守備位置を固定。秋季キャンプから、「外野手はカットマンまで素早く正確に返す」をチームに徹底した。そして、木浪、小幡の競争に象徴されるように、ノイジー、佐藤のクリーンナップであっても、不振であればスタメンを外されるという、フェアな競争意識をチームに持ち込んだ。
 外野はほぼ初挑戦となるノイジーは、キャンプ初日から、自ら志願してシートノックに入った。何も岡田監督は高圧的にプレッシャーをかけているわけではない。岡田イズムが浸透する中で、「やるべきことを一生懸命やる」という風土をごく自然に作り出したのである。
 一方の中日はどうか。
 立浪監督は厳しい指揮官だ。
 だが、チームは若い力で土台から作り直すという過渡期にあり、石川を4番で使い、福永、村松といったルーキーにチャンスを与え、「競争よりも我慢」の采配を振るっている。福永が3割をマーク、村松も、8回のチャンスに“幻のタイムリー”を放つなど、結果を出して期待に応えているが、前日のゲームまで、7試合連続で失策を記録するなど、どうしても経験不足が露呈してしまっている。そういうミスもすべて受け入れて立浪監督は、我慢起用を続けているのだが、まだ野球の細事までを完璧にできる完成度はチームにはない。野球をよく知る“立浪イズム”がチームに浸透するまでに至っていない。スタメンに外国人が不在でローゲームのスコアで勝っていかねばならないチームとしては、より厳しい状況に置かれている。まして基本の基本。立浪監督がチームに求め続ける「懸命な全力プレー」が、おざなりになってしまっていては、そもそもの決定的な戦力の違いが根本にあるとはいえ、首位阪神との差を埋めることはできない。

 

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