大麻成分が検出された井岡のドーピング問題の全貌が判明した(写真・山口裕朗)
大麻成分が検出された井岡のドーピング問題の全貌が判明した(写真・山口裕朗)

大麻成分が検出された井岡一翔のドーピング問題の全真相

 厚労省の公式サイトでは、「海外でお土産として売られているチョコレートやクッキー、キャンディなどの中に大麻が含まれていることがあります。誤って口にして体調不良で救急搬送された事例も発生しているので十分に注意しましょう」と呼びかけており、受動喫煙でも検出されるケースがある。
 ただ今回検出された量は、WADAの基準値以下の微量ではあったが、受動喫煙や、大麻の含まれた食品などを間違って口にしてしまって代謝されたレベルではないという。
 潔白を訴える志成ジムサイドが、検体のすり替えを疑う際には、本人の尿かどうかを調べるためのDNA鑑定が必要となり、JBC側には、その用意もあるが、現段階では、井岡サイドは、その検査を求めてはいない。
 
 詳細な時間経緯は判明したが、半年もの期間があったにもかかわらず発表が世界戦直前になったことへの問題は残る。
 B検体の再検査を引き受けてくれる検査機関を探すことなどに時間がかかったそうだが、亀田裁判で敗訴したJBCが、組織のガバナンスを必要以上に強化したため、物事の決定までの手続きに時間がかかりすぎている点は問題だろう。実際、性別変更した真道ゴー(グリーンツダ)のライセンス許可問題など他にも結論を出せていない問題が山積みになっている。
 またWADAの基準値以下であり、ドーピング違反に問われない数値のものを発表する必要があったのかという議論もある。世界的にも、NBAやNFLなどのドーピング検査でも大麻成分に関する基準値が引き上げられている傾向があり、基準値以下の場合は、公表されない。これは大麻については、欧米で一部合法化されている国や地域があり、海外での痛み止めなどの医薬品に大麻成分が含まれているため、パフォーマンスに影響を与えないとみられる分量については、ドーピング違反が問われない。
 だが、今回あえて公表された理由は、日本の法律では、大麻が禁じられているからだという。スポーツドーピングと日本の法律の問題は分けて考えねばなならないことを理解した上で社会的な影響を考えて公表の手段が取られた。
 ただ警察への報告は行われなかった。
 JBCの調査によると、覚せい剤の成分が出た際には、病院の医師などは、警察への報告義務があるが、大麻成分に関しては報告義務がないという。またドーピング検査で大麻成分が出たことだけで刑事処罰の対象にはならない。
 2020年大晦日の田中恒成(28、畑中)戦のドーピング検査では、A検体で大麻成分が検出された段階で、必要なステップを踏まずB検体の再検査も行っていないにもかかわらず、警察に報告してB検体をすべて没収され、その後、井岡の潔白を証明する機会を失うという失態を犯した。潔白だったにもかかわらず井岡が、警察の家宅捜査を受けるなどの精神的なダメージを受けていた。

 

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