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5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)
5ゴールをあげた宮澤ひなたが大会得点王に輝いた(写真・ロイター/アフロ)

なぜボール支配率21%のなでしこが強豪スペインを4-0で撃破できたのか…機能した組織的守備と1位突破で見えた「優勝の可能性」

 決勝トーナメントを見すえた池田監督のチームマネジメントに加えて、最終ラインの右ストッパーに石川璃音(20、三菱重工浦和)と三宅史織(27、INAC神戸)、高橋はな(23、三菱重工浦和)とすべて異なる選手を起用した采配に鈴木氏は驚く。
「W杯のような大会を戦う監督の心理として、なかなか最終ラインの選手は代えたくないし、代えるのが怖いポジションでもある。それを試すのではなく、誰を使っても戦力は変わらない、という起用法をしている。他のポジションを見ても、このチームは誰が出てもレベルが落ちない。決勝までを見すえた選手起用ができるのは、絶対的な強みだと思う」
 グループCを1位で突破したなでしこはベスト8進出をかけて、5日の決勝トーナメント1回戦でグループAを2位で突破したノルウェーと対戦する。
 スウェーデンで開催された1995年の第2回女子W杯を制した古豪は、北欧特有の恵まれたフィジカルを生かした空中戦に個人技を織り交ぜながら、長く続いた低迷からの脱却を期して臨んでくる。鈴木氏は左右のウイングバックがカギを握ると予測する。
「何よりもまずロングボールを蹴らせないこと。それも両サイドを起点に、相手ゴールまで遠い位置からでも蹴り込んでくるのが特徴なので、早い段階で左右のウイングバックが外までプレッシャーをかけなければいけない。その上で相手のトップに対しては、3バックがしっかりと競り合えるポジションを取りながらマークする必要がある」
 右ウイングバックでの先発が予想される清水梨紗(27、ウェストハム)は次戦に備えて、スペイン戦の後半14分にベンチに下がった。左は遠藤が同40分までプレーした関係で、代わりに入った杉田妃和(26、ポートランド・ソーンズ)の先発が有力だ。
 後半開始とともに宮澤をベンチへ下げたのも、もちろんノルウェー戦をにらんだ采配となる。2戦連続フル出場から一転して、後半14分から途中出場した攻守の中心、ボランチの長谷川唯(26、マンチェスター・シティ)も休養十分で先発に名を連ねるだろう。
 誰が出ても遜色なく戦える顔ぶれに加えて、なでしこはスペインを相手に柔軟な戦い方も演じた。鈴木氏は「トップから最終ラインまでチームとしての完璧な守備ができるのは、日本以外にはちょっと見当たらない」と前置きした上でこう語る。
「まだ早いと言われそうですけど、優勝する可能性は十分にあると思う」
 なでしこのグループリーグ3連勝は、2015年カナダ大会以来2度目。無失点での突破は8度目のW杯で初めてだ。負けたら終わりの次なる戦いは、スペイン戦と同じウェリントン・リージョナル・スタジアムを舞台に、日本時間の5日午後5時にキックオフを迎える。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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