「悪者になった経験がない私にはつらい」“ボールガール事件”のブズコバが全米OPの女子ダブルスにエントリーせず…米専門メディアにいまだSNSに殺到する非難への苦悩を告白
テニスの全米オープンが開幕、加藤未唯(28、ザイマックス)組の失格を審判に訴えた全仏オープン女子ダブルスの“ボールガール事件”を境に世界中から非難を浴びているマリエ・ブズコバ(25、チェコ)が女子シングルスの1回戦でアシュリン・クルーガー(19、米国)をストレートで下した。だが、ブズコバは今回女子ダブルスにはエントリーしなかった。開幕前に痛めた右足の影響が考えられる一方で、ブズコバが、米メディアに対して「かなりつらい」と打ち明けたほど“炎上”の続くSNS上での非難が関係している可能性もある。
“前哨戦”で痛めた右足がシングルス1本に絞った原因か
開幕した今年最後の四大大会、全米オープンで異変が起こった。
本戦2日目の現地時間29日までに発表された女子ダブルスのドロー。エントリーした64組のなかに、7月のウィンブルドン選手権でサラ・ソリベストルモ(26、スペイン)とのペアでベスト4に進み、四大大会の最高位を更新したブズコバの名前がなかったのだ。ちなみに全仏でペアを組んだ親友のソリベストルモは、ベネズエラの選手とのペアでエントリーしている。
ブズコバがグランドスラムの女子ダブルスに出場しないのは、昨年の全米オープン以来となる。現時点で理由は明らかにされていないが考えられる原因はある。全米オープンの前哨戦として出場した14日開幕のウェスタン&サザン・オープン(米オハイオ州シンシナティ)の女子シングルス準々決勝で、ブズコバは第1セット途中で棄権していた。
このときのブズコバは右太ももに白いサポーターを巻いて、同胞のカロリナ・ムチョバ(27、チェコ)との一戦に臨んでいた。しかし、立て続けに3ゲームを失った段階でプレー続行を断念。右足を引きずりながらコートを後にしていた。
直後の20日に更新した自身のSNSで、ブズコバはこう綴っている。
「早く回復させて、全米オープンに備えます」
先週行われたWTAツアーに出場しなかったことからも、痛めていた右足の状態を考慮したブズコバが全米オープンではシングルスだけに絞る決断を下したと見られる。しかし、一方でSNS上で、いまなお殺到する非難の声に対しての精神的ショックが女子ダブルス辞退への影響を与えていた可能性も否定できない。
ブズコバはウェスタン&サザン・オープン期間中に、アメリカのテニス専門サイト『tennis.com』のインタビュー取材に応じ、23日に公開された記事のなかで、自身のSNSに非難が集まる状況への苦悩をこう打ち明けている。
「何かをシェアするたびに多くの人々がヘイト(非難)を投稿してくる、メンタル的に好ましくない日々がいまも続いている。誰もが望む状況ではないし、自分が悪者だと感じる状況に陥った経験がない私にとってはかなりつらい。私たちアスリートはソーシャルメディアにさらされていて、何かが口コミで拡散されていくなかで誤解されやすいと感じています」
6月の全仏オープンを境にブズコバの“悪名”が世界中に知れわたった。
女子ダブルス3回戦で起きたボールガール事件だ。そのスポーツマンシップに欠ける行為が世界中のテニス関係者やファンを敵に回した。
ブズコバは今回のインタビューの中でも“ボールガール事件”で浴びた非難について「誤解されやすい」と弁解している。
「私とサラが笑ったことと、彼女たちが失格になった件とは何の関係もありません。私のスペイン語は完璧ではありません。なので、サラはいつも笑っていて、私が間違えたスペイン語の単語のリストまで持っているほどです。もちろん相手の失格を望んでいたわけでもありませんが、彼女(加藤)がしたことは明らかにルールに反していました。そして残念ながらそれ(失格)が起こりました。その後に私たちは、ソーシャルメディアから少し距離を置くようになりました」