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3勝3敗で迎える運命の決戦
3勝3敗で迎える運命の決戦

「魔球への戸惑いと痛恨のスクイズ失敗」なぜオリ山本由伸は逆王手をかける“魂の138球”完投勝利でシリーズ三振記録を打ち立て、第1戦でKOした岡田阪神は攻略できなかったのか?

 日本シリーズの第6戦が4日、京セラドーム大阪で行われ、オリックスが5-1で勝利、対戦成績を3勝3敗に戻して逆王手をかけた。第1戦で7失点していた先発の山本由伸(25)が9回を138球1失点の完投勝利。14奪三振は、工藤公康(1999年)、ダルビッシュ有(2007年)の13奪三振記録を抜いてシリーズ新記録となった。なぜ山本は汚名を返上でき、阪神は2試合連続の攻略に失敗したのか。そして注目の第7戦はどうなるのか。

 「今日は(球数の)リミットはないよ」

 

 京セラドームがざわめく。
 8回に頓宮がダメ押しのアーチを描き、沸き上がるベンチ前に、山本が9回に備えてのキャッチボールをするために姿を見せたのだ。すでに球数は126球に達していた。
 中嶋監督が「今日はリミット(球数制限)はないよ」と伝えたのは7回。山本は、その時点で最後まで一人で投げきることを決意していたという。
 最後は近本を152キロのストレートでセカンドゴロ。138球を投げ完投勝利した絶対エースは、ひざをつき右手を天に向けて突き上げ、ガッツポーズを繰り返した、
「みんなは、心配しているだろうなと思いながらマウンドに上がりました。先制点を与えてしまったんですが、調子は良かったのでしっかりと落ち着いて投げることができたと思います」
 第1戦で7失点した3年連続の4冠王は、崖っぷちの第6戦で汚名を返上した。日本シリーズ5試合目にしての初勝利。シリーズに勝てない男のレッテルもはがした。14奪三振はシリーズ記録。
「三振を取れているのは気付いてたんですけど、とにかく1イニングに集中して、気にしないように投げてました」
 第5戦で山本を中継ぎスタンバイさせていた中嶋監督も信頼を持って送り出していた。
「前回やられた山本が2回連続でやられるわけがない。信頼して出しました。球数はいっていましたけど、この試合を全部、由伸にかけました」
 立ち上がりはよくなかった。
 阪神の岡田監督もそう見ていた。2回には、一死からバッテリーのサインミスなのか、低めにミットを構えていた若月が立ち上がってしまうほど、ストレートが高めに浮き、ノイジーにライトスタンドへの先制ソロを許した。さらに佐藤、DH起用の糸原に連打され、一死一、三塁のピンチを招いた。だが、木浪を156キロのインコースのストレートで見逃しの三振。続く坂本には意表をつくセーフティバントを初球に仕掛けられたが、ファウルになった。死球を与え、満塁となったが、近本をフォークで三振に斬って取った。
 実は、この近本への配球が、第1戦で7失点した山本との違いを示す象徴だった。山本は初球にカーブから入ってストライクをとった。そこから、ストレートでファウルを打たせてカウントを整え、最後はボールゾーンに落ちるフォーク。米メディアに「レインボーカーブ」と称される大きな軌道を描くカーブが、第1戦では13球中、3球しかストライクとならず、自らのクビをしめた。緩急をつけることができず、フォークに頼り、それを阪神打線に見極められ、ストレートを狙われるという悪循環。しかも、そのストレートが、この日の立ち上がり同様に走らず、シュート回転していた。
 だが、この日は、その“魔球”のカーブが見事に修正されていた。
 6回にはノイジー、佐藤輝明、糸原を三者凡退に抑えたが、結果球は、すべてカーブ。結局、22球カーブを使い、ストライクが14球だった。

 

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