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3勝3敗で迎える運命の決戦
3勝3敗で迎える運命の決戦

「魔球への戸惑いと痛恨のスクイズ失敗」なぜオリ山本由伸は逆王手をかける“魂の138球”完投勝利でシリーズ三振記録を打ち立て、第1戦でKOした岡田阪神は攻略できなかったのか?

 阪神の大物OBの一人は、山本の変貌理由をこう分析した。
「カギはカーブだと考えていたが、見事に修正してきた。中嶋監督がフォームを微調整したという話をしていたそうだが、左足の使い方を若干変えていた。あれでカーブの精度を戻したのかも。カーブでカウントを取れるからストレートが生きフォークが効果的になった。阪神の打者を戸惑わせた。第1戦では、フォークの精度が落ちていて、ストレートに的を絞れたが、カーブとストレートで緩急をつけられるから、珍しくボール球のフォークに手を出す場面が増えた。山本が、本来のピッチングを取り戻し、頭を使った配球をしたということ」
 14三振のうち、結果球は、ストレートが7つで、フォークが6つ、スライダーが一つ。加えて4つの見逃しの三振はすべてストレート。これだけ綺麗に配分され、しかも最速158キロマークすれば、ボール球を振らずに四球を選ぶことで打線をつなぎ18年ぶりにシーズンを制した阪神打線が間違ってボール球のフォークを振ったのも無理はなかったか。
 悔いが残るとすれば、1-2で迎えた4回だろう。岡田監督が動く。終わってみれば、この試合で唯一、タクトを振るった場面だった。
 一死から糸原が、2打席連続のヒットとなる内野安打で出塁すると、続く木浪の初球にエンドランを仕掛けたのだ。木浪はベースに動いた紅林の逆をついて打球を流し、一、三塁の同点機を作った。岡田監督は、続く坂本の初球にセーフティスクイズのサインを出した。オリックスベンチを浮足立たせ、考えるスキも与えぬ連続攻撃である。だが、インローに鋭く落ちるカットボールを投じられて坂本はファウル。決めきれなかった。

 1979年の広島ー近鉄の日本シリーズ。あの江夏の21球で、江夏豊が、石渡茂のスクイズを外したのはカーブだった。プロでもキレのある変化球にバットを当てるのは難しい。
 岡田監督のことだから2球連続で仕掛けるかとも思ったが、強打に切り替え、結局、ワンバウンドになるようなフォークを振って三振に終わった。だが、二死から得点するのが今季の阪神の粘り強さである。近本が157キロを表示した初球の高めに浮いたストレートを狙い打った。打球はライトを襲ったが、フェンスに張り付いた森がジャンプ一番スーパーキャッチ。打球がフェンスにぶつかって捕球したかのようにも見え、岡田監督がリクエストをかけたが、VTR映像は、ダイレクトにグラブに収まったシーンを正確に映し出していた。
 スポーツ各紙の報道によると、試合後に、岡田監督は、「(山本は)最初はようなかった。だから最初に崩したいよな」と、立ち直る前までに山本を攻略できなかったことを悔いた。
 山本は5回から明らかにギアをあげた。いや、中嶋監督の言葉を借りれば「力が抜けていい感じになった」と表現した方がいい。
 その裏、中嶋監督が3番に抜擢した紅林が期待に応えて2ランを放ち、4-1となったことで、山本にさらに余裕が生まれた。変化球から入って、ストレートでカウントを稼ぎ、変化球で締めるというパターンに配球をチェンジ。阪神打線を迷走させた。
 村上が第1戦のように無失点で山本にプレッシャーをかけることができなかったことも完投勝利を手助けする形になった。報道によると、岡田監督は「今日は悪かったなあ。コントロールが。ボール高かったもんなあ」と語ったそうだが、これほど制球が定まらない村上を見たことがない。逆球が目立ち、ボールが高めに浮いた。武器である“マッスラ”は、コースをついてこそ効果を発揮する。前出のOBは、「シリーズの想像を絶する目に見えぬ疲労がどこかにあって中6日でシーズン中のように回復しなかったのでは?」と分析していた。

 

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