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1月の全日本女子サッカー皇后杯で優勝した名門のINAC神戸が電撃“身売り”。なでしこジャパンが国立での北朝鮮戦に臨む2日前のタイミングに衝撃が走った(写真・西村尚己/アフロスポーツ)
1月の全日本女子サッカー皇后杯で優勝した名門のINAC神戸が電撃“身売り”。なでしこジャパンが国立での北朝鮮戦に臨む2日前のタイミングに衝撃が走った(写真・西村尚己/アフロスポーツ)

なぜ女子サッカー名門INAC神戸はなでしこJ北朝鮮戦の2日前に電撃“身売り”を発表したのか…止まらぬ観客動員減少と人気低迷

 平日のナイトゲーム開催に加え真冬の寒さがぶり返した直近の気象条件が集客に影響している可能性もある。アジア最終予選の開催自体が広く浸透していないおそれもある。それでも、交通アクセスのいい都心の国立競技場で、どちらがホームかわからない光景が生まれかねない状況は、女子サッカー界が直面する逆境と無関係ではないだろう。
 話をINAC神戸に戻せば、社業やアルバイト、学生と二足の草鞋を履くのが通常だった女子サッカー界で、文会長はアスコのグループ企業で所属選手たちを雇用。その上で社業を免除する、実質的なプロクラブとしてチーム強化を推し進めてきた。
 2011シーズンには、経営難に陥った日テレ・ベレーザとの契約を打ち切られた澤穂稀、大野忍、近賀ゆかりらなでしこジャパン組を補強。昼間に練習ができるINAC神戸の環境でコンディションを整えた澤が、大会得点王&MVPを獲得する活躍を演じたなでしこは同年の女子W杯ドイツ大会で優勝、未曾有の女子サッカーブームを巻き起こした。
 翌2012年にはクラブハウスが隣接する練習拠点、神戸レディースフットボールセンターが六甲アイランドに完成。先行投資を惜しまなかった文会長のもとで、INAC神戸は2011シーズンからリーグ戦3連覇を達成。2013シーズンには皇后杯、そしてリーグカップを合わせた国内三冠を独占するなど、文字通りの黄金時代を迎えていた。
 しかし、文会長の言葉通りに個人や一企業の努力や情熱だけでは、おのずと限界が訪れる。未来へと繋げるポジティブな経営を託された大栄環境の金子社長は、PK戦の末に三菱重工浦和レッズレディースを撃破した1月の皇后杯決勝を文会長らと観戦。INAC神戸を連結子会社とする株式譲渡契約を結んだ決意を会見でこう語っている。
「大栄環境という社名を入れることはまったく考えていない。いまの名称を将来的にも残し、世界に名を馳せるようなチームになっていくための支援をしていきたい」
 3月第1週には中断中だったWEリーグが再開され、INAC神戸は、3日に勝ち点1差で追走する2位・浦和との首位攻防戦(浦和駒場スタジアム)を戦う。

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