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1月の全日本女子サッカー皇后杯で優勝した名門のINAC神戸が電撃“身売り”。なでしこジャパンが国立での北朝鮮戦に臨む2日前のタイミングに衝撃が走った(写真・西村尚己/アフロスポーツ)
1月の全日本女子サッカー皇后杯で優勝した名門のINAC神戸が電撃“身売り”。なでしこジャパンが国立での北朝鮮戦に臨む2日前のタイミングに衝撃が走った(写真・西村尚己/アフロスポーツ)

なぜ女子サッカー名門INAC神戸はなでしこJ北朝鮮戦の2日前に電撃“身売り”を発表したのか…止まらぬ観客動員減少と人気低迷

 一方で疑問もある。なでしこジャパンのパリ五輪出場がかかった北朝鮮戦を2日後に控えたタイミングで、なぜ経営権の譲渡が電撃発表されたのか。
 大栄環境ではグループ企業の三重中央開発が20年以上にわたって、現在はなでしこリーグ1部に所属する伊賀FCくノ一三重をスポンサードしてきた。会見に同席した大栄環境の金子文雄社長(67)は伊賀FCでの実績に言及した上で、さらにこう語っている。
「INACさんを迎えるにあたり、(会社の)認知度も上がると決断しました」
 ただ、伊賀FCの件はあまり知られていなかった。これは想像の域を出ないが、INAC神戸の知名度に加えて、北朝鮮戦の直前だからこそ世間に与えるインパクトが強く、大栄環境の名前が全国規模で知れわたると判断した可能性も捨て切れない。
 要望通りに、新オーナーのもとで本拠地だけでなくクラブ名称も変わらず、昨年7月から指揮を執るスペイン出身のジョルディ・フェロン監督(45)以下の首脳陣、そして所属選手たちの顔ぶれも変わらない。それでもWEリーグを代表する強豪クラブ、INAC神戸の経営権譲渡は日本の女子サッカー界に決して小さくはない衝撃を与えた。
 2021年9月に旗揚げされた待望のプロリーグ、WEリーグでINAC神戸は初代女王に輝いた。昨シーズンもリーグ戦とカップ戦の皇后杯でともに準優勝。3年目の今シーズンも、1月下旬に決勝が行われた皇后杯で7年ぶり7度目の優勝を果たしている。
 しかし、WEリーグ全体に目を向ければ、1試合平均5000人の集客目標が掲げられた1年目は、最終的に1560人にとどまった。WEリーグ自体がコアなファン・サポーター以外にはほとんど認知されず、前身のなでしこリーグの春秋制から秋春制へ移行した点に、依然として尾を引きずるコロナ禍が拍車をかけた影響が考えられた。
 昨シーズンの平均入場者数は1401人とさらに減少した。前半戦を終えてウインターブレイクに入っている今シーズンはここまで1699人と全体的には持ち直しているものの、INAC神戸に限ればリーグ最多だった1年目の3158人、同2位だった昨シーズンの2194人から同5位の1916人と、減少傾向に歯止めがきかない状況が続いている。
 苦境が続いているのはWEリーグだけではない。
 今夏のパリ五輪出場をかけて、日本女子代表なでしこジャパンは28日に国立競技場で、北朝鮮とのアジア最終予選第2戦に臨む。サウジアラビアのジッダで24日に中立地開催された第1戦を0-0で引き分けたなかで、勝者がパリ五輪切符を獲得する大一番となる。
 しかし、なでしこジャパンの公式X(旧ツイッター)によれば、26日夕方の段階におけるゴール裏チケットの販売済み枚数は日本側の1526枚に対して、在日本朝鮮人総連合会を中心に集客が呼びかけられているアウェイ側は倍近い3000枚となっている。

 

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