• HOME
  • 記事
  • サッカー
  • 高額チケット?興行過多?なぜ創設37年目して町田が初優勝した天皇杯決勝の国立競技場は「ガラガラ」だったのか?
天皇杯決勝が行われた国立の客入りは寂しかった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
天皇杯決勝が行われた国立の客入りは寂しかった(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

高額チケット?興行過多?なぜ創設37年目して町田が初優勝した天皇杯決勝の国立競技場は「ガラガラ」だったのか?

 折しも1968年のメキシコ五輪で、日本代表が銅メダルを獲得した直後。史上初の快挙をサッカーブームへの起爆剤にしたいと思案した当時のJFA幹部が、元日の明治神宮への初詣客を取り込むのはどうかと発案。250万人とされる参拝客の1%でも来場してほしいという願いを込めて、会場も明治神宮に近い国立競技場に決めた。
 この策が鮮やかに奏功した結果として、天皇杯決勝は元日の風物詩として2013シーズンの第93回大会まで国立競技場で開催され、NHK総合で生中継された。しかし、年明け早々に活動が入った日本代表のスケジュールや、東京五輪を見すえた国立競技場の全面改修に加えて、選手たちのオフ期間をしっかりと確保すべきという声も上がった中で決勝も前倒しで、なおかつ別会場で開催されるようになった。
 現時点で決勝が元日に、新国立競技場で開催されたのは2020シーズンが最後。この状況が天皇杯決勝の特別感を曖昧なものにしてきた点は否めない。
 ましてや今シーズンに関しては代表戦に加えてルヴァンカップ決勝、さらに天皇杯の準決勝及び決勝が開催された関係で、優勝争いが佳境を迎えているJ1リーグはわずか2節の開催に留まっている。こうした弊害を、秋春制へのシーズン移行で「解消できる」としてきた宮本会長は、第106回大会の天皇杯決勝を2026-27シーズンの半ばとなる元日の開催に戻す構想に関して「それは協議しています」と認めた
「我々としても、やはり正月に(決勝を)開催したいと常に思っている。元日の午後にサッカーが、天皇杯決勝があるという光景を続けていきたい」
 来年8月第1週頃に開幕するJリーグの新シーズンは、12月第2週頃から翌2027年2月第3週頃までをウインターブレークにあてる予定となっている。JFAが主催する天皇杯をどのように組み込ませて、町田の黒田監督だけでなくキャプテンのDF昌子源(32)も男泣きした歓喜の決勝が、SNS上で<国立ガラガラ>と揶揄された状況を変えていくのか。JFAの検証とJリーグとの議論が急ピッチで進められていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

関連記事一覧