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ケニアの31歳のサウェがロンドンマラソンで1時間59分30秒の世界記録を樹立した(写真・AP/アフロ)
ケニアの31歳のサウェがロンドンマラソンで1時間59分30秒の世界記録を樹立した(写真・AP/アフロ)

「不可能の心理的限界が取り払われた」マラソン2時間切りで人類はどこまで速くなる?「30秒縮まる」アディダス製の超軽量シューズが秘密兵器 だった

 近年は科学の進歩により、トレーニングがより効率的になり、スペシャルドリンクのエネルギー補給も格段に良くなった。そして何より、シューズの進化が大きい。
 2017年にナイキがカーボンプレート搭載の厚底シューズを一般発売して、マラソンに革命が起きた。どんどんタイムが向上したのだ。女子の世界記録は2時間15分26秒から2時間9分56秒へと5分半近くも短縮している。
 そして各社がカーボンプレート搭載の厚底シューズを開発。10年前と比べて、シューズの進化は凄まじいものがある。そのなかで現在、〝世界最高峰〟といえるのがアディダスの「ADIZERO ADIOS PRO EVO」シリーズだ。
 2023年9月の発売以降、世界のメジャーレースを席巻。アディダスは最新モデルとなる
「ADIZERO ADIOS PRO EVO 3」を4月23日に世界数量限定で発売を開始し、ロンドンでサブ2を達成したサウェとケジェルチャも着用していた。EVO 3は何が凄いかとういと、圧倒的な「軽さ」にある。前モデル比で約30%の軽量化に成功して、重量は97g(片足27.0cm)。これはナイキが2017年に発売した厚底シューズのファーストモデルの60%ほどの重さしかない。
 シューズの性能が同じなら、当然、軽い方が有利になる。コロラド大学の論文(2016年)によると、シューズが片足10g軽くなると0.078%速くなるという。単純計算では、シューズが片足50g軽くなると、2時間12分00秒のランナーなら30秒ほど速く走れるのだ。
 そしてサブ2を実現したことで、マラソン界は〝新たな扉〟が開いたといえるかもしれない。
 陸上競技でいえば100mは「10秒の壁」、1マイルには「4分の壁」が存在していた。100mの9秒台、1マイルの3分台は当時、「不可能」と考えられていた夢の記録だ。
 しかし、100mは1983年にカール・ルイス(米国)が平地で人類初の9秒台に突入すると、1991年には世界記録を9秒86まで短縮。現在の世界記録はウサイン・ボルト(ジャマイカ)の9秒58で、2025年は36人のスプリンターが公認記録で9秒台をマークしている。
 1マイル(約1609m)は1954年にロジャー・バニスター(英国)が3分59秒4をマーク。それまで9年間、世界記録は更新されていなかったが、バニスターが人類初の4分切りを果たした46日後に世界記録が塗り替えられた。さらに1年以内に23人もの選手が4分の壁を超えたのだ。
 これは「不可能」と考えていた心理的な限界が取り払われた結果だとされており、マラソンでも同じような現象が起きる可能性がある。
 なお現在の1マイル世界最高記録はヒシャム・エルゲルージ(モロッコ)の3分43秒13。マラソンの記録もまだまだ短縮されていくはずだ。科学の進歩がある限り、人類に〝不可能〟はないのかもしれない。
(文責・酒井政人/スポーツライター)

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