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松本圭佑が衝撃TKO勝利(写真・山口裕朗)
松本圭佑が衝撃TKO勝利(写真・山口裕朗)

計量失格で「1年間無収入だった」“ミラモン”松本圭佑がSフェザー級T準々決勝を衝撃TKO劇で1年7か月ぶりの復活星…「負けたら引退」の覚悟と「今日1歳誕生日の愛娘のために」

 松本が父に反抗したのは26歳にして初めてだった。
「シャキっと動けるなら動きたい。初めてのスーパーフェザー級で、年明けから長く時間をかけて減量した。まだ動きと直結しない。わざとしてないんだからカッとなった」
 だが、好二トレーナーは、その息子の姿に成長を確信したという。
「うれしく感じた。(現役時代に)米倉会長から『世界チャンプになるならもっと我が強くなければダメだ』と言われたきたが、圭佑には1ミリも我がなかった。だからその態度を見て“よしっ”と思った。これならプレッシャーを跳ね返せる、リングに上げて大丈夫だと思った」
 心優しい松本は、翌日には「昨日はごめん」と、父に謝ったそうだが、大失態を経ての1年7か月の時間は松本を変えた。
 変わらざるをえない運命もあった。
 昨年5月13日に愛娘の糸詩ちゃんを授かった。
 実家で出産した妻を支えなければならない時期にそれができず、しかも、1年間、試合ができなかったため、収入はゼロ。妻は家計を支えるためバイトにも出た。
「だからこそ負けたら引退という言葉が浮かんだ。心配をかけたし、収入も安定せずに不安だったと思う。自分を情けないなと感じた。でも天使(長女)が生まれて励ましてくれた。家族のために頑張らなきゃならなかった」
 偶然にも試合の翌日の13日が1歳の誕生日。リングサイドで、妻の沙弥さんに抱かれた娘のためにも負けられなかった。
 まだ終わりではない。優勝まで残り2試合。9月に予定されている準決勝では、この日の第3試合で福井貫太(石田)を3-0判定で下した木谷陸(KG大和)と対戦する。
 14戦11勝(5KO)3敗のメキシコからの逆輸入ボクサーで、ガードを固めて一発を狙うパワー系スタイル。
 松本は控室のモニターでその試合を見届けた。
「自分の試合が控えていたが、見ながらこう戦おうという戦略がイメージできた。ガード固めたメキシコ仕込みで頑丈に戦うイメージがある。自信?自信があるとは言えない。自信がないくらいから練習に入り、練習を積んで自信を作る」
 スーパーバンタム級の肉体を応援にかけつけたスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥からは「よく仕上がっているな」と賞賛された。好二トレーナーは「優勝できれば、フェザー級でいけるかどうか、皆さんに見て欲しい。世界をやるならフェザー級でやりたい」との構想を明かした。
 リカバリー後の当日体重もフェザー級時代の65キロよりも1キロ軽い64キロだったという。
 松本は「余裕はあったけれど、あれだけやらかした中で、(フェザー級に)落とせますなんて言える立場じゃない」と語るに留めた。
 ただ復活白星を「良かったんじゃないか」と評価した大橋秀行会長はフェザー級に落とす計画については「無理、無理」と完全に否定した。
 スーパーフェザー級での世界挑戦は簡単ではないが、昨年5月にはジムメイトの力石政法が判定で敗れたものの、エドゥアルド・ヌニェスとのIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦を実現させた今の大橋ジムのプロモート力からすれば不可能ではないだろう。
 だが世界を語るのは準決勝、そして決勝を制してからだ。
 優勝賞金は1000万円。
「(妻は)そごうのブランド店を見てこようって(笑)。貯金もそう。家族に還元できればいい」
 頼もしい父親の顔をしたミラモンはそう言って笑った。

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