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侍ジャパンデビューを果たしたロッテ佐々木朗希。4回を無失点にまとめたがWBC公式球への適応に戸惑い、フォークが制御できずわずか2三振に終わった(写真・日刊スポーツ/アフロ)
侍ジャパンデビューを果たしたロッテ佐々木朗希。4回を無失点にまとめたがWBC公式球への適応に戸惑い、フォークが制御できずわずか2三振に終わった(写真・日刊スポーツ/アフロ)

侍“無失点”デビューもWBC公式球への適応に苦労した佐々木朗希はWBCでの強敵に通用するのか?

 来年3月のWBCに向けての侍ジャパンの強化試合が10日、札幌ドームで行われ、日本が9―0で豪州に快勝した。代表デビュー戦となる千葉ロッテの“完全男”佐々木朗希(21)が先発、4回を4安打無失点に抑えたが、滑りやすいWBC球への対応に苦労して、2三振しか奪えずに本来の投球内容とは程遠かった。WBCで招集予定の先発は4人で、そのうち3人が、プールBの1次ラウンドに加えて、準々決勝、準決勝、決勝の3試合に2度登板しなければならないが、登板間隔をあけねばならない佐々木をどう起用するかに栗山監督は頭を悩ませそう。世界一奪回のためにはエンゼルスの“二刀流”大谷翔平(28)の参戦が不可欠となってきた。

 高速フォークが130キロ台の平凡なものに

 

 異変が起きていた。
 佐々木は、立ち上がりに、いきなり159キロのストレートをトップバッターのケネリーへライト前に弾き返された。さらに続く今季エンゼルスで数試合に出ている“メジャーリーガー”ホワイトフィールドを3球でカウント1-2と追い込みながら、決め球のフォークはボールとなり、手を出してもらえない。もう1球フォークを続けたが、今度はファウルにされた。
 フォークの球速は135から138キロ。150キロの高速フォークが武器である佐々木のウイニングショットに球速が出ない。滑るとされるWBC公式球の影響だった。結局、ストレートも高めに浮き、四球を与え、無死一、二塁のピンチを背負う。だが、ここから崩れないのが、佐々木の真骨頂。
 3番のグレンディニングを155キロの外角ストレートで見逃しの三振に打ち取ると、4番のウェードを詰まらせ、6-4-3の併殺に斬り抜けた。
 2回には二死一塁から、デールに縦のスライダーを2球続けた。フォークが制御できないので、スライダーを試してみたのだろう。
「真っ直ぐはすぐに修正できたが、フォークボールなかなか修正できなかった。このタイミングでたくさん練習したかった。最後の方はいいボールが多かった。次につなげていけたらと思っています」
 結局、佐々木は、毎回、走者を出しての4回無失点。4回にはウェードにフォークを3連投して、三遊間を破られたが、続くジョージには鋭く落として三振を奪った。全59球のうち24球を投じて試したフォークの適応に最後には手応えは感じた様子。しかし、相手が豪州でなければテストは通用しなかっただろう。
 2009年、2013年と2度、WBCのコーチを務めた評論家の高代延博氏は、佐々木の公式球への適応に疑問を投げかける。
「ローリングス社製のWBC公式球は、NPBのボールより、少し大きく、ツルツルと滑るのが特徴。手を湿らせるなどの工夫をしなければ対応は難しい。佐々木は、公式球に適応できていなかった。元々ストレートがシュート回転する傾向があるが、より顕著だったため、空振りも取れずファウルでカウントを整えることもできていなかった。フォークも、ボールを固定できないのか、軌道が出てしまっていた。150キロ近い高速フォークが武器だが、135、136キロ程度しか出ていなかった。あれでは見切られる。昨日の今永昇太が10三振、この日も2番手の高橋奎二が三者連続三振でスタートし、クローザーの大勢も三者連続三振に斬って取った。その豪州打線を相手に2三振は、あまりにも寂しい数字。私がWBCコーチ時代も、当時、西武の岸孝之がWBC公式球に苦労して自慢のカーブが曲がらずに代表選考から最終的に漏れたことがあった。その意味で、今回の強化試合で誰が対応できて、誰ができないかがハッキリしたのでは」
 試合後、栗山監督は「ある意味、内容が素晴らしかったピッチャーもいるし、朗希は今回投げてボールの滑りだったりを確認してもらった。すごく意味のある試合だった」と評価したが、悩まされるのは、本番での起用法だろう。
 高代氏も「こういうボールを使うと肘、肩への負担も増す。佐々木を良く知るロッテの吉井理人新監督がスタッフ(投手コーチ)にいるとはいえ、彼は、登板間隔をあけて使わねばならない投手でもあるので、どこでどう使うかが難しい選択となりそうだ」と指摘した。

 

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