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スタジアムにはらくだに乗った警護が待機
スタジアムにはらくだに乗った警護が待機

カタールW杯は本当に「史上最高」なのか…効き過ぎた冷房、新型コロナ定期検査もマスクも無し、海外客無料のメトロに良好な治安、高騰物価…現地取材で見えてきたもの

 町中も状況は変わらない。医療機関を除き、屋内外ともにマスクの着用義務が撤廃された状況ではマスクをしている方が奇異な視線を向けられる。中東で初めて開催されるW杯はいつしか人類が新型コロナを克服し、以前の日常に戻った象徴として位置づけられるようになっていた。
 FIFAのインファンティーノ会長は7日にビデオメッセージを公開。そのなかでグループステージの48試合を「すべてスタジアムで観戦した」と明かしている。
 国土自体が広大で、都市間の移動に飛行機が必須だった前回のロシア、前々回のブラジル両大会ならば全試合観戦は不可能だった。対照的にカタールの国土面積は秋田県とほぼ同じ。首都ドーハ市内と近郊に、8つのスタジアムすべてが位置する今大会はこう謳われている。
「W杯史上最もコンパクトな大会」
 大会期間中にカタールを訪れる外国人は約120万人で、同国の人口の約45%にあたる。大会全体のコンパクトさは各国のファン・サポーターやメディアにも、過去の大会では考えられもしなかった、一日に2試合の観戦や取材の“はしご”を可能にしている。
 そして、観客やメディアのスムーズな移動をアシストしているのが、カタール初の地下鉄として2019年5月に開通したドーハメトロとなる。レッド、グリーン、ゴールドの3路線からなるドーハメトロは、8つのスタジアムのうち5つにダイレクトでアクセスしている。
 日本がドイツとスペインを撃破したハリーファ国際スタジアムも、コスタリカに敗れたアフメド・ビン=アリー・スタジアムも最寄り駅の目の前に位置する。クロアチア戦が行われたアル・ジャヌーブ・スタジアムだけは遠かったが、最寄り駅からシャトルバスが運行されていた。
 ドーハメトロに乗車する場合、海外からの観戦者はビザにあたるハヤカードを、メディアは取材証を提示すればすべて無料となる。たとえ乗り逃したとしても、2分後には次の便が来るので焦る必要もない。三菱重工業や日立製作所など日本企業がシステムを受注した車両はすべて無人運転化され、トンネルの先を窓越しに見られる先頭車両は子どもたちの人気の的になっている。
 ただ、注意しなければいけない点がある。原則3両編成の車両は富裕者、女性や子ども、その他に分けられている。うかつに富裕者向けの車両に乗ったときだけでなく、女性と子ども優先車両で空席に座り、女性を立たせている状況になれば刺すような視線を向けられる。
 毎日午前3時まで運行しているドーハメトロのおかげで、カタール入りした先月13日以降でタクシーを利用したのはたった一度だけ。それも大会取材証をまだ取得していなかった到着初日に、ハマド国際空港から民泊先までの移動に使っただけで済んだ。
 日本国内で観戦するファン・サポーターに悲鳴をあげさせた午前4時、6時間の時差があるカタール時間で午後10時のキックオフを可能にしたのは、日没後に活動する傾向が強い国民性、ドーハメトロの存在、そして治安のよさがセットになったからだ。民泊で利用したマンションの一室も、まったく問題がないという理由で、玄関の鍵は四六時中かけられていなかった。

 

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