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スタジアムにはらくだに乗った警護が待機
スタジアムにはらくだに乗った警護が待機

カタールW杯は本当に「史上最高」なのか…効き過ぎた冷房、新型コロナ定期検査もマスクも無し、海外客無料のメトロに良好な治安、高騰物価…現地取材で見えてきたもの

 こうした状況もあって、日本の練習取材を含めて、徒歩と地下鉄を利用する移動にまったく問題はなかった。歩数が8000前後で推移し、一部ホテルや特設のファンゾーン以外はアルコール類がご法度となるイスラム教の戒律も加わった日々の体調は、寝不足を除けばすこぶる快調だった。
 ただ、物価は高い。ドイツ戦前にビーフストロガノフと飲料を注文した値段は日本円で約3500円。メディアホテルの予約で出遅れた筆者は民泊を利用したが、日本の練習場から地下鉄で3駅の場所で探し当てた一泊約1万8000円の物件は、この値段でも“激安”の部類に入った。
 民泊の家主、オバイドさんはヨルダンの出身。妻子を母国に残し、エンジニアを調達するドーハ市内の企業でマネージャーを務めるオバイドさんは、ドイツ戦を境に日本代表の大ファンになった。スペイン戦後にはテレビ観戦していたカフェからハリーファ国際スタジアムまで駆けつけ、ファンゾーンで日本人サポーターと喜びを分かち合うほど日本に魅せられていた。
 地下鉄の各駅やスタジアムに配置されている、係員や大会ボランティアの方々も然り。最初は「ニーハオ」と語りかけられるケースが多かったが、筆者が日本人だとわかるとドイツ戦の勝利を「コングラチュレーション」と喜びながら、笑顔で手を振ってくれるようになった。
 日本人サポーターが試合後のスタジアムでゴミを拾う姿や、日本チームが試合後のロッカールームを綺麗に清掃する行為も必然的に注目される。コスタリカ戦前日の公式会見ではアメリカ人記者が森保一監督(54)に、一連の清掃行動の真意が問われる異例の場面もあった。
 質問を受けた瞬間は驚きながらも、指揮官はこんな言葉を返している。
「日本の文化として、使ったところを綺麗にして帰るのは当たり前だと思っています」
 民泊先には開幕後にアルゼンチンファンのオバイドさんの従兄弟が、決勝トーナメント1回戦前にはモロッコ人の父娘も加わった。クロアチアに負けた夜は戻ってきた筆者を全員が寝ずに出迎えてくれて、「日本は本当にいいチームだった」と慰めてくれた。モロッコがスペインを下した夜はオバイドさんや従兄弟、そして筆者が観戦から戻ってきた父娘を笑顔で祝福した。
 グループステージの平均観客数が5万人を、テレビ視聴者数が20億人を超えたとするFIFAの発表を受けて、インファンティーノ会長は「W杯史上で最高」と胸を張った。日本の敗退を残念がったカタールの人々の視線が、快進撃を続けてアフリカ勢初のベスト4へ進出し、いまやイスラム諸国の代表として崇められるモロッコへと注がれるなかで、大会はいよいよクライマックスを迎える。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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