J3沼津の監督に就任した”ゴン”中山雅史氏はチームスローガンを自らの筆でしたためた
J3沼津の監督に就任した”ゴン”中山雅史氏はチームスローガンを自らの筆でしたためた

なぜ”ゴン”中山氏はJ1磐田を退団しJ3沼津の監督を選んだのか?

  J3のアスルクラロ沼津の新監督に就任した元日本代表FWの中山雅史氏(55)が17日、静岡県沼津市内で記者会見に臨んだ。昨シーズンまで古巣のジュビロ磐田でコーチを務めた中山氏だが、監督としてJクラブを率いるのは初めて。中山氏はなぜJ3の沼津で新たな一歩を踏み出すのか。どのようなビジョンを掲げながら、昨シーズンのリーグ戦で15位に低迷した沼津を変えていくのか。50分近くにおよんだ“ゴン中山節”に、熱血指揮官が見すえる未来が凝縮されていた。

 就任会見では”オフサイド”

 

 気持ちが高ぶりすぎてしまったからか。緊張と興奮を胸中に交錯させていた就任会見の冒頭で、スーツ姿の中山新監督は微笑ましい失敗を犯してしまった。
 司会進行役を務める広報担当者から、肩書きと名前を読み上げられた直後。まずは簡潔な挨拶だけで済ませる場面で「全身全霊を込めて、勝利に向かっていきたいと思います」と切り出すと、そのまま新シーズンへの抱負を1分以上も語り続けたのだ。
「先走りですね。オフサイドはよくないです」
 予定されていた進行から外れていたと気がつくと、すかさず自虐的な表現で会見場を埋めたメディアの笑いを誘った。もっとも、新監督としての第一声となった抱負には現役時代からお馴染みの熱さに、客観的な視線を心がける冷静沈着さが融合されていた。
「いまは野心でいっぱいですけど、シーズン中に何かが起こり、それにどのように対応していくのかが非常に重要になってきます。自信がどうこうというのもありますけど、過信にならず、慢心も持つことなく指導していければ。自信が過信になったときに、チームには甘いところが出てくる。慢心になったときにもピンチになり得るのを、自分は経験してきているので」
 日本サッカー協会(JFA)が発行する最上位の指導者資格、S級ライセンスを付与されたのが2020年3月。Jクラブの監督を務める状況が整った中山氏は、2015年9月から所属してきた沼津をその年限りで退団。2021年1月に磐田のコーチに就任した。
 迎えた昨シーズン。J2への降格圏にあえぎ続けた磐田は、8月に伊藤彰監督(50、現ベガルタ仙台監督)を解任した。渋谷洋樹ヘッドコーチ(56、現仙台ヘッドコーチ)が内部昇格した後任監督の候補として、一時は中山コーチの名前も報じられた。
 最終的にJ1の最下位でJ2へ降格した昨年11月。磐田を退団した渋谷監督以下のコーチングスタッフのなかに中山コーチも含まれていた。前身のヤマハ発動機時代から所属してきた磐田に残る選択肢はなかったと中山氏はこのオフの決断を振り返る。
「自分がやってきたことを、なかなか形にできなかったところで責任を感じていました。そこで現場に残る選択は、なかなか難しい状況がありました」

 

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