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イニエスタの退団セレモニー(写真:松尾/アフロスポーツ)
イニエスタの退団セレモニー(写真:松尾/アフロスポーツ)

「人生でもスポーツでもスーパーヒーローはいない」イニエスタは神戸のラストマッチで何を伝えたかったのか?

 ヴィッセル神戸のMFアンドレス・イニエスタ(39)が、日本での最終戦を1-1のドローで終えた。本拠地ノエビアスタジアム神戸で1日に行われた北海道コンサドーレ札幌戦で、今シーズン初先発を果たしたイニエスタはリードを許したまま、後半12分に交代を告げられた。イニエスタ抜きの堅守速攻スタイルで開幕から上位につけてきた神戸だが、札幌戦を最後に退団するキャプテンへの温情を優先。結果としてチグハグな戦いとなり、元スペイン代表のレジェンドを勝利で送り出せなかった。

 「新天地でサッカーを続けたい」

 

 自軍の指揮官と目を合わさずに、イニエスタはピッチを後にした。
 1点のビハインドで迎えた後半12分。今シーズン初先発を果たしていたイニエスタに交代が告げられ、神戸におけるプレーが終焉を迎えた直後だった。
 左腕に巻いていたキャプテンマークを託した、MF山口蛍(32)をはじめとするチームメイトと抱き合い、大歓声を送るファン・サポーターに手を叩いて応えたイニエスタは、万感の思いを込めてピッチに向かって深々とお辞儀した。さらに反対側のベンチからわざわざ歩み寄ってきた、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督(65)とも熱い抱擁をかわした。
 しかし、テクニカルエリアで手を叩きながら出迎えた、神戸の吉田孝行監督(46)にはまったく反応を示さない。視線を落としながら指揮官の横を通り過ぎたイニエスタはベンチ前で再び顔を上げて、コーチ陣やリザーブの選手たちとタッチを繰り返した。
 神戸でのラストマッチで異彩を放った瞬間と言っていい。試合後に特別に臨んだ記者会見。14分あまりに及んだ質疑応答で、イニエスタは一度だけ吉田監督に言及した。契約を半年残して神戸を退団し、新天地を求めるモチベーションの源泉を問われたときだ。
「自分はまだできる、選手として戦う準備ができている、チームに貢献できると日々感じてきた。ただ、監督はそのように考えていなかった。しかし、自分にとってはそれがサッカーを続けるモチベーションに繋がった。だから、新天地でサッカーを続けたい」
 5月下旬に行われたイニエスタの退団会見で、神戸でのラストマッチになると明かされていた札幌戦。名称がノエビアスタジアム神戸になった2013年3月以降では歴代最多となる、2万7630人もの大観衆が駆けつけた一戦はキックオフから異彩を放っていた。
 今シーズンの出場がわずか3試合。すべて後半途中から投入され、プレー時間も計38分にとどまっていたイニエスタが先発に名を連ねた。ピッチに立つのは5月7日まで、先発となると昨年8月6日までさかのぼらなければいけない。
 試合後の公式会見。意図を問われた吉田監督は「(イニエスタの)先発起用に関しては説明はいらないかな、と」と言葉を濁し、さらに短くこう続けた。
「彼に対するリスペクト、ということです」
 昨シーズンの神戸は開幕から低迷を続け、代行を含めて実に4人の監督が指揮を執った。通算3度目の登板を果たした吉田監督のもとで、最終的には13位で残留を決めた過程で、怪我で長期離脱を強いられたイニエスタは夏場以降、ほとんどピッチに立てなかった。
 イニエスタは今シーズンもコンディション不良で出遅れ、さらに夫人のアンナさんの第5子出産に立ち会うために開幕直後に一時帰国。3月中旬に再来日するまでの間に、引き続き指揮を執った吉田監督はイニエスタ不在の戦い方を確立させた。
 ベースにすえられたのは前線からの激しいプレスと豊富な運動量、そして球際での強度の高さ。その上でボールを奪えばFW大迫勇也(33)をまずターゲットにすえて、右ウイングの武藤嘉紀(30)やインサイドハーフの山口らが相手ゴール前へ飛び込んでいく。
 イニエスタが加入した直後に掲げられた「バルセロナ化」とは対極に位置する、堅守速攻スタイルがはまった神戸は開幕から好調をキープ。すでに昨シーズンの11勝に並び、前節を終えた時点で首位の横浜F・マリノスを勝ち点3差で追う2位につけていた。

 

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