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イニエスタの退団セレモニー(写真:松尾/アフロスポーツ)
イニエスタの退団セレモニー(写真:松尾/アフロスポーツ)

「人生でもスポーツでもスーパーヒーローはいない」イニエスタは神戸のラストマッチで何を伝えたかったのか?

 自分の居場所がなくなりつつあった現状を、イニエスタは「時に物事は希望や願望通りにはいかない」と率直に認め、シーズン半ばで神戸を去る決断を下した。
「それぞれが歩んでいく道が分かれ始め、監督の優先順位も違うところにあると感じ始めた。これが自分に与えられた現実であり、リスペクトを持ってそれを受け入れた」
 吉田監督も信念を貫く形で、イニエスタ抜きの戦いを継続させてきた。途中出場させたのはすべてホーム戦であり、5月以降はアウェーへの遠征にも帯同させなかった。しかし、ラストマッチで信念よりも温情を優先させ、結果として引き分けてしまった。
 イニエスタを初先発させた一方で、チーム最多、リーグでも2位の12ゴールをあげている大迫を初めてベンチスタートさせた。大迫へのロングボールを起点としてきた攻撃は必然的に機能しない。イニエスタもトラップやパスなど局面で輝きを放ったが、泥臭さと無骨さ、そしてショートカウンターを前面に押し出す神戸でなかなか存在感を放てない。
 優位に立つはずのホームで札幌に20本と倍のシュートを放たれ、そのうちの一つを前半26分に押し込まれた。0-1で折り返した後半からたまらず大迫を投入。イニエスタと共存させるも閉塞感を振り払えないまま、後半12分に交代を告げられた。
 J1での通算成績を114試合出場、21ゴールで終えたイニエスタは、57分間に及んだ最後のプレーを「自分としては、もっとできたと思っている」と振り返った。
「ただ、人生でもスポーツでもスーパーヒーローはいない。現実として自分もこの4、5カ月間、チームに継続的に絡んでいなかった。そのなかで最大限の貢献ができるように、自分のすべてを出し尽くした。自分が何をしたのか、どのような結果だったのかというよりは、ここまでやってきたことに対する誇りと達成感の気持ちをもって今日という日を終えた」
 試合は後半40分、右CKからDFマテウス・トゥーレル(24)が来日初ゴールを頭で叩き込んだ神戸が振り出しに戻し、そのままドローで終えた。消化試合数の関係で暫定順位ながら、神戸は試合がなかったマリノスとの差を1ポイントしか詰められず、逆に川崎フロンターレに2-0で快勝した名古屋グランパスに抜かれて3位に後退した。

 

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