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8ラウンドにフルトンを倒した井上尚弥が吼えた(写真・山口裕朗)
8ラウンドにフルトンを倒した井上尚弥が吼えた(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥は戦慄TKOで“最強”フルトンに勝てたのか…頭脳戦で仕掛けた巧妙な“罠”と「必ず当たる」秘策とL字ガード

 試合後のリングではファンへのサプライズが用意されていた。
 マイクを向けられた井上が「まだ僕が持っているのは2本。この会場にタパレスがきている。次戦、統一戦をしたい」と語ると、会場がどっと沸き、軽装のタパレスがリングに登場すると、どよめきに変わった。
 WBAスーパー&IBF王者は、「自分自身が王者であることを証明したい。井上尚弥選手とぜひ試合がしたい」と熱望。井上は「今年中にこの2本のベルトをかけて戦いましょう」と答えて握手をした。
 大橋会長は試合後の会見で「年内には4団体統一戦に向かいたい」と断言。タパレスをプロモートしているMPプロモーションのショーン・ギボンズ氏は、「まだ契約は交わしていない。ミスター本田(帝拳会長)と話を進めていくことになるが、年内にはやりたい。井上はグレートなボクサーだが、タパレスとならファンが喜ぶ面白い試合になる」と筆者に明かした。
 タパレスは40戦37勝(19KO)3敗の好戦的なサウスポー。今年4月に大方の予想を裏切ってアマ経験豊富なムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に2-1判定で勝利して2つのベルトを一気に手にした。WBOバンタム級王者前後の時代には、大森将平と2度戦い連勝(一度は体重超過)、2019年には岩佐亮佑とのIBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦で11回TKO負けを喫し、2021年には同挑戦者決定戦で、勅使河原弘晶に2回TKO勝利するなど、日本人ボクサーとの対戦が6度あり、日本のファンにも馴染みが深い名前。ただフルトンのように上背はなく井上にとっては、アフマダリエフの方が難しい相手だっただろう。それでもWBCの指名挑戦権を持つとされる元2階級制覇王者で日本では事実上の永久追放となっている“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)やバンタム級時代に一度は対戦合意した元3階級制覇王者のジョンリル・カシメロ(フィリピン)ら、その先に“刺客”が控えている。
 記者会見で最後にひとつ質問した。
「久しぶりの緊迫感のある戦いの中で成長したように見えた。新境地は開いたか?」
 井上は笑顔で答えた。
「すごくやりがいあった。技術戦に頭を使ったし楽しかった。ちょっと違った世界を」
 モンスターの新章がスタートしたのだ。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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