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阪神が開幕31試合連続無失点のライデル・マルティネスを攻略してサヨナラ勝利を収めてた(写真:スポーツ報知/アフロ)
阪神が開幕31試合連続無失点のライデル・マルティネスを攻略してサヨナラ勝利を収めてた(写真:スポーツ報知/アフロ)

「最後にそういう展開がくると感じた」なぜ阪神は巨人“ライマル神話”の崩壊に成功したのか…代走植田の揺さぶりとサヨナラヒーロー豊田に代打を出さなかった藤川監督の勝負師的采配

 満塁となってマルティネスは明らかに動揺していた。その豊田への初球。外角へのスライダーがワンバウンドになった。珍しく腕が緩んでいた。2球目に岸田のサインにクビを3度ふって、155キロのストレートを投げ込み、豊田のバットは空をきった。だが、3球目、4球目と、いずれもストレートが制御できずにカウントは3-1となった。5球目は、外角高めへの151キロのストレート。見送ればボールだった。しかしストレート一本に絞っていた豊田は手を出してファウルになった。だが、結果的に、このボールを振りにいったことで気持ちも吹っ切れ、マルティネスのうなるようなストレートをバットに当てる対応力が高まった。6球目もファウル。必死で食らいつく。
「チャンスをずっと潰していたので何とかしてやりたいという気持ちで」
 そして運命の7球目。高めのストレートを捉えた打球は、センターのオコエのほぼ定位置まで飛んでいった。オコエはダイレクトでバックホームしたが、余裕で植田がサヨナラのホームを駆け抜け、豊田は両手を広げてのウイニングラン。マルティネスは、帽子を脱いで無表情のままマウンドを降りた。
 「覚えていない」
 東海大相模高―国際武道大―日立製作所を経て2021年にドラフト6位で入団し、4年目にして、初めてのお立ち台。豊田の頭の中は真っ白だった。「前に飛んでくれたので(植田)海さんだったら絶対還ってこれると思って」と、その場面を振り返った。
 出迎える藤川監督も満面の笑みで、「よく森下が打って植田が足を決めてというところでは本当にいい選手たちの活躍でした」と、マルティネスを攻略した5人の虎戦士を称えた。
 先発のルーキー伊原がプロ入り後、初めて初回に失点したが、その後、5回まで毎回走者を背負いながらも我慢強く無失点に抑え、6回木下、7回ネルソン、8回及川、9回石井の無失点リレーで逃げ切った。巨人に13安打を許しながらも14残塁と空回りさせ、ついにチーム防御率は1.98と驚異の1点台に突入した。
「しっかりとプルペンの用兵を準備しながらやっている。石井が帰ってきたことで岩崎を休ませることもできた。重要なピース。それがあるからこそ手前からピッチャーをつぎ込んでいける」
 藤川監督は頭部への打球直撃で戦列を離れていた石井の復帰を勝因のひとつにあげた。

 

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