「なんですかそれ?井上家ではそんな話は出ていない」で始まった井岡一翔戦で井上拓真が2度ダウン奪いWBC王座防衛…右目眼窩底骨折疑いで病院直行の37歳レジェンドは引退か現役続行か?
プロボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが2日、東京ドームで行われ、井上拓真(30、大橋)が元4階級制覇王者の井岡一翔(37、志成)から2回と3回にダウンを奪い、大差判定勝ちを収めた。9月にWBC挑戦者決定戦を勝ち指名挑戦権を持つ那須川天心(27、帝拳)との再戦を行う予定だ。一方の井岡は、試合後の検査で右目の焦点が合わず眼窩底骨折の疑いで会見をキャンセルして病院へ直行。引退か、現役続行か、その進退に注目が集まる。
「井上尚弥の弟ではなく井上拓真をアピールしたい」
もう「井上尚弥の弟」の拓真ではない。元4階級制覇のレジェンドを完膚なきまでに粉砕した。2ラウンドだった。おそらくこのラウンドのポイントはプレスをかけた井岡に傾いていた。だがラウンドの終了間際に優劣を決定的にしようと力んで右を打って出た井岡のそれに右のストレートがカウンターとなって炸裂した。よろけた井岡へ左アッパー、さらに右フックを追い打ちをかけると井岡はダウンした。
「スパー、練習でずっと練習していたパンチ。それが自然に出た」とは試合後の拓真の回想。井岡は片膝をついてカウントをギリギリまで待ち、コーナーに帰るとイスマエル・サラストレーナーに「大丈夫」とダメージが深刻でないことを伝えた。
さらに3ラウンドだ。今度は、拓真が体を沈めて、パンチの出所を隠して右アッパーを顎に突き上げると、井岡は2度目のダウン。
「右アッパーは得意としているパンチ。それでダウンがとれてよかった」と拓真は胸を張った。
4ラウンドが終わった時点での公開採点は2人がフルマークの40―34、1人は39―35。拓真は井岡のプレスに対抗して前に出るのではなく下がってボクシングをした。
「あえてあの戦いに変えた。自分の得意とするパターンにはまるなと思った」
試合のインターバルで拓真は父でトレーナーの真吾氏に「この作戦でいく」と伝えたという。
下がってボクシングをすることで、井岡の相手が打ってきたところにリアクションする得意のカウンターを潰し、逆に拓真がカウンターを狙うことができる。
7ラウンドに左フックから右アッパーを連発させ完全にペースをつかむと、井岡の右目が腫れ始めた。8ラウンド終了後の公開採点は2人が79―71で1人が80-70。もうKOしか勝つ手段のなくなった井岡は豊富なキャリアに裏付けされたボクシングの駆け引きができなくなった。それでも拓真はKO決着はできず12ラウンドをフルに戦うことになった。
大橋秀行会長は「2回ダウンを奪うなんて想像もつかなかった。井岡選手は最終回まで右を合わせてきた。技術的に凄い」と、拓真が倒しにいけなかった理由は、一発逆転を狙った井岡の右のカウンターが理由だったと明かした。
判定はもう聞くまでもなかった。
120―106、119-107、118-108の完勝だった。
リング上でマイクを向けられた拓真は「張り詰めた12ラウンド。あっという間の時間。すごく楽しい戦いだった」と言い、「レジェンドの相手がいたからこその今日の自分。この自分を生み出してくれたのは井岡選手。今日はありがとうございました」と元4階級制覇王者へリスペクトを示した。

