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横浜FCの本拠地であるニッパツ三ツ沢球技場は老朽化が問題となっている(写真・アフロ)
横浜FCの本拠地であるニッパツ三ツ沢球技場は老朽化が問題となっている(写真・アフロ)

なぜ横浜FCは建設計画を発表した新スタジアムを横浜市に寄贈しようと考えているのか?

 リリースでは寄贈する条件として【1】新スタジアムの施設名称を『ONODERAスタジアム』とする【2】60年間の管理運営をONODERA GROUPまたは子会社が行う【3】管理運営期間中の使用料・賃貸料を無償とする――が提案され、横浜市側と協議していくとも綴られている。
 百億円単位の資金が必要とされるスタジアムを新設した上で自治体へ寄贈する、すなわち自治体の所有物とするメリットはどこにあるのか。実はほぼ同じ形が2016年2月に開場したガンバ大阪のホーム、パナソニックスタジアム吹田で取り入れられている。
 140億円の総事業費を上回る金額が法人および個人からの寄付、さらに助成金でまかなわれた新スタジアムは、2015年9月の竣工後に大阪府吹田市へ寄贈。ガンバを運営する株式会社ガンバ大阪が2063年3月まで、約48年間におよぶ指定管理者契約を結んでスタジアムを運営管理している。
 行政がいっさい経費を負担せずに公共施設を資産として保有するこの形態のもとでは、ガンバ側には固定資産税と命名権料を支払う義務が生じない。逆にスタジアムの管理維持費や大規模修繕費もスタジアム収入などからガンバ側が負担し、吹田市側はいっさい負担しない。
 スポーツ界では2004年オフに創立された楽天が、本拠地とした宮城球場(現楽天生命パーク)の改修工事費用約70億円を全額負担している。球場そのものは宮城県所有なので、もちろん楽天側に固定資産税を支払う必要はない。さらに新たな設備のすべてが宮城県側に寄付された形となり、楽天も都市公園法に基づく宮城球場の管理許可権限を県側から委託された。
 入場料や広告料、店舗での飲食やグッズ販売で得る収入はすべて楽天に入り、スタンドの増設やレフト席後方のパーク化など、球場設備の改修に関しても楽天の自由裁量に委ねられている。球場をめぐる同じような契約は千葉ロッテと千葉市、広島と広島市などでも結ばれている。
 自治体が大規模な予算を組むにはさまざまな調整を行うため、長い時間を要するケースが少なくない。スピーディーさを追い求めていく上でも、ONODERA GROUPは公民連携が掲げられたスタジアム新設構想に手を挙げた。発表されたリリースは、次のように締められている。
「具体的な計画内容や、事業費およびスケジュール等については現時点では未定ですが、横浜市と協議のうえで検討を進め、今後の計画進捗に応じて随時情報発信を行ってまいります。(中略)今後も三ツ沢を本拠地とし、地元・横浜に深く根差したクラブとして、さらなる飛躍を期してまいります」
 聖地として位置づけてきた三ツ沢を拠点に新たな未来を示した横浜FCは、ニッパツ三ツ沢球技場で16日に行われる明治安田生命J2リーグ第41節でツエーゲン金沢と対戦。勝てば他会場の結果に関係なく今シーズンの2位以内が確定し、1年でのJ1復帰が決まる。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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