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世界的な名GKノイヤーの壁をぶち抜いた浅野(右)の逆転ゴールはワンタッチコントロール技術の高さから生まれた(写真・ロイター/アフロ)
世界的な名GKノイヤーの壁をぶち抜いた浅野(右)の逆転ゴールはワンタッチコントロール技術の高さから生まれた(写真・ロイター/アフロ)

W杯ドイツ戦の劇的逆転勝利は奇跡か必然か…城氏解説「0-1で耐えたチームメンタルと6人攻撃の勇気あるシステム変更」

 森保監督は、後半12分に長友→三笘、前田→浅野の2枚替えをして、両サイドを高く上げた。ドイツのラウムは、逆に前へ出られなくなり、日本がイニシアティブを取れるようになった。中盤に生まれたスペースで日本がボールを支配。森保監督は、同26分に田中→堂安、同30分に酒井→南野の交代カードを切った。酒井が疲労で足がつっていたこともあるが、サイドバックの酒井を下げて南野を前線に入れるという勇気ある交代がポイントになった。

 南野はトップ下。浅野をワントップに、三笘、南野、堂安、鎌田、伊東の6人が攻撃参加する超攻撃的布陣である。森保監督は、これまでこういうカードの切り方をしてこなかった。本当の勝負どころでの決断。インスピレーションが働いたのかもしれないが、”持っている指揮官”だと感じた。W杯という舞台を勝ち抜く指導者には重要な要素である。

 南野投入直後に、三笘が得意のドリブルからエリア内に入って南野へ速いパス。南野のシュートはノイアーに弾かれたが、堂安が走り込んで同点ゴール。そして同38分に板倉の裏を狙うロングパスに反応した浅野が、ファーストタッチで前を向きドリブル。シュロッターベックのマークを振り切り、ほとんどシュート角度のなかったノイアーのニアサイドを打ち抜き逆転ゴールを決めた。

 最初のトラップでのボールの置き所が的確だったためスピードに乗ることができて神技的なゴールを生んだ。シュートコースは空いていなかったが、迷わず浅野は右足を振り抜いた。浅野は、わずかなシュートコースを見極めていたわけではなかったのだろうが、ノイアーの体にシュートが当たれば何かが起きると判断したのだろう。本来であれば、ノイアーは、ニアサイドを切らねばならなかったが、体が逆方向を向いて、そのスキを突かれる形になった。浅野の確かなワンタッチコントロールの技術と、スピード、そして思い切りの良さが生んだ値千金の逆転ゴールだった。

 前半にPKを与えるミスをした権田は後半25分にドイツの怒涛の攻撃を浴びたが、3発続けて枠内に飛んだシュートをファインセーブで止めた。90分(プラス11分)をトータルで考えると、ミスを取り返しても余る権田の守備力も見逃せない。

 前半とまったく別のチームのように失速したドイツのチームコンディションなど、奇跡へとつながる風がハリファ・インターナショナルスタジアムに吹き、そして森保監督の采配力、ここまでの4年間で十分に試したとは言えない3バックを機能させた選手の対応力という必然が重なり、ドイツ撃破の歴史的勝利が実現したのである。

 ドイツ戦の勝ち点3で現段階の決勝トーナメント進出の可能性は40%くらいか。重要なのは27日のコスタリカ戦だ。勝ち点3なら当確、勝ち点1でも、ほぼ確実だが、スペインに0-7と大敗した背水の陣のコスタリカは、巻き返しをかけて必死になってくるだろう。  展開予想とすれば、日本のボール保持率が高くなり、スペイン戦でも明らかになったように絶対的なエースのいないコスタリカは、固い守りからの一発狙いとなるだろう。日本はドイツを下して勢いに乗っているが、リスペクトを忘れず、落ち着いたゲームで「最悪でも勝ち点1」という計算のもと戦ったほうがいい。

(文責・城彰二/元日本代表FW)

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