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Jリーグが2026年からの秋春制への移行を真剣に検討し始めた(写真・アフロ)
Jリーグが2026年からの秋春制への移行を真剣に検討し始めた(写真・アフロ)

Jリーグが2026年からの「秋春制」移行を本格検討…メリットとデメリットを検証してみる

もっとも、今回公表された仮スケジュールは7月最終週か8月初旬の真夏に開幕する。現行の春秋制でも7月中旬から8月上旬にかけて約3週間の中断期間が設けられている点を踏まえれば、シーズン移行へ強い説得力をもたらす材料にはなりえないだろう。
 一方でデメリットとして常にあげられてきたのが、降雪地域を本拠地とするクラブが直面する経営リスクとなる。全体の約8割のクラブがシーズン移行に反対した2017年の理事会で、最終的に否決を発表した村井満チェアマン(当時)は、理由としてあげた9つの項目のひとつとして、冬季開催へ向けた対策や施設整備が自前で前提とされている状況をあげていた。
 冬季の豪雪がさらに顕著になっている日本の現状を踏まえれば、1カ月を超えるウインターブレイクを設けてもリスクはゼロにはならない。スタジアムへ向かうファン・サポーターの交通手段や、日々の練習を行う各クラブの環境などの課題も残されている。
 年度単位で活動する日本社会全体との整合性もある。
 教育機関は4月に始まり、現状の春秋制とほぼ一致している。高校やJクラブのユースをはじめとする育成年代の年間スケジュールと、秋春制をどのようにして整合させるのか。高卒や大卒の新人選手が、クラブへ加入するタイミングという問題も頭をもたげてくる。
 各クラブをスポンサードする企業が年度単位で出資しているなかで、シーズン移行で生じる期ずれをどのように修正していくのか。J1を頂点としたピラミッドが形成され、各カテゴリー間で昇降格が行われる状況を考えれば、4部に当たるジャパンフットボールリーグ(JFL)や全国9つの地域リーグ、都道府県リーグなどのシーズンも合わせる必要性に迫られる。
 降雪地域のクラブへの資金補填をはじめ、デメリットの方がはるかに多い状況に、樋口本部長は「抜本的にJFAと一緒に議論していく形になる」と明言。選手・スタッフ、クラブ経営、ファン・サポーター、そしてスポンサーや自治体を含めたステークホルダーの観点から、日本サッカーの発展につながる最大公約数を検証していく方針を示した。
 北海道コンサドーレ札幌の社長として過去に協議に加わった野々村芳和チェアマンは、具体的な日程案が示されなかった前回とは状況が異なるとした上でこう語るにとどめている。
「実現可能かどうかはさておき、いろいろな人から真っさらに意見を聞いていきたい」
 今後は5月から7月にかけて必要な情報を収集・整理し、7月から9月にかけてそれらを元にした方向性の議論を実施。選手会やファン・サポーターの意見も聞いた上で、早ければ今秋、遅くとも今年中に最高議決機関である理事会での多数決で可否を決議する。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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