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TG戦を3-2で制して7連勝の阪神。岡田監督の采配が光る(資料写真・黒田史夫)
TG戦を3-2で制して7連勝の阪神。岡田監督の采配が光る(資料写真・黒田史夫)

なぜ30勝1番乗り阪神の岡田監督は“神采配”を連発させるのか…木浪のバントと“1人1殺”リレー…原巨人と対照的だった7回の攻防

 7回の攻防が明暗をわけた。
 大竹、グリフィンの両先発左腕の好投で息のつまるような0-0の展開の中、先に動いたのは原監督だった。先頭の大城が一、二塁塁を破るヒットで出塁すると、代走に増田を送った。続く長野はバントの構え。だが、大竹が一つ牽制球を投げると、長野はサードコーチにサインの確認に歩いた。大竹は、さらに2つの牽制を入れ、初球は外角球で様子を見たが、一転、長野は強行策。カウント1-1のいわゆる作戦カウントになったが、巨人ベンチに動きはなく、3球目のカットボールを引っかけて遊撃併殺打。長野は、打った瞬間に下半身のどこかに異常が発生した様子で、その場で転倒、一塁へ走っていなかった。続くブリンソンが、センター前ヒット。歯車が嚙み合わないチグハグな攻撃となり、門脇も三振に倒れ、結局、何もしないままチャンスを潰した。
 こういう仕掛けの後にゲームは動くものだ。
 一死から坂本が四球で歩くと、岡田監督は、打率3割を超えるチャンスメーカーの木浪に手堅くバントで送らせたのだ。原監督とは対照的な作戦だった。
「チャンスらしいチャンスがなかったので、あそこはバント」
 投手コーチは、まだ球数90球の大竹の続投を考えていたようだが、岡田監督は、「あそこしか勝負をかけるところがなかった」と、大竹に替え、渡邉を代打に送った。
 8回に突入すると、中川、大勢と、苦しい巨人のブルペンの中では、比較的まだ安定感のある2人が出てくる。岡田監督は、勝負は、その前の7回と踏んだ。
 グリフィンはボールが先行したため、原監督は、カウント途中で渡邉を申告敬遠。岡田監督は、カウントが悪くなれば歩かされ、左対左の近本の勝負に持ち込まれると、想定していたという。
 近本はカウント2-2からファウルで3球粘った。いずれもグリフィンの勝負球。8球目のナックルカーブがボールになってフルカウントとなると、真ん中に甘く入ってきたツーシームをセンター前へ弾き返す。
「外野も前に来てたので、何とかスリーツーまでもっていって(走者が自動に)走ってくれたら、どこかにヒットになったら点が入るなと楽な気持ちで(打席に)入っていました」
 二塁走者がスタートを切れるように、計算づくでフルカウントにして仕留めたというのである。坂本が生還。1-0となり、あきらめかけた白星の可能性をプレゼントしてくれた大竹は、ベンチの奥でタオルで涙をぬぐった。
「1人はみんなのために、みんなは1人のために、というかそういうチームプレーを感じたので思わず(涙が)出ました」
 近本は大竹が泣いたことを「全然知らなかった」という。
 加えて、この時、原巨人にミスが生まれていた。
 打球をさばいたブリンソンは三塁へ投げたのだが、その送球がそれ、その間に打者走者の近本が二塁に到達。二、三塁にしてしまったのである。
 原監督は、グリフィンから大江にスイッチしたが、続く中野もピッチャー返し。打球は大江が差し出したグラブをすり抜けてセンタ―前へ。2点を追加することになった。
「点が入って楽な気持ちで打席に入れた。近本さんのおかげです」とは、中野の試合後のヒーローインタビューだ。
 近本の得点圏打率は再び5割に乗り、26打点、中野のそれも.364で、21打点。1、2番コンビでの47打点は特筆すべき数字だ。

 

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