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ドラフト候補だった花巻東の佐々木麟太郎は米国の大学への留学を決断(写真・日刊スポーツ/アフロ)
ドラフト候補だった花巻東の佐々木麟太郎は米国の大学への留学を決断(写真・日刊スポーツ/アフロ)

10億円を稼ぐ学生アスリートも…NPBドラフトより米国留学を選んだ“怪物スラッガー”佐々木麟太郎が切り拓く新しいアマ選手の可能性とは?

 

 花巻東高の佐々木麟太郎(18)がプロ志望届を提出せずに米国の大学に留学することを決断した。どの大学とは決めていないようだが、当然、ある程度は、絞り込んでいるのではないか。いずれにしてもドラフト1位候補選手がこうした形で留学することは初のケースだ。
 プロか日本の大学か、あるいは社会人か。基本的に佐々木クラスの高校球児の進路としてはその三択だったが、新たな選択肢は、より高いレベルでの野球を経験してから次のステップへ、という思惑が透ける。メジャーでドラフトされることも視野に入ってくるだけに、彼が道を切り開くことで、別の扉が開く。加えて彼は、日本でドラ1候補になるような高校生アスリートには、別のポテンシャルがあることも併せて示すことになるかもしれない――本人にはあずかり知らぬところで。

 2021年から全米で始まったNIL契約

 

 2021年7月から米国ではカレッジアスリートが独自に企業などと契約し、報酬を得ることが可能になった。それは、NAME、IMAGE、LIKENESS(名前、画像/映像、肖像権)の頭文字を取ってNIL法と呼ばれるが、わかりやすくいえば、タレントやプロ選手がテレビCMなどに起用されて報酬を得る仕組みと同じだ。

 NCAA(全米大学体育協会)は長くアマチュアリズムを盾にそれを禁じてきたが、市場の拡大とともに利益の独占に異を唱える選手らが増え、少しずつ、NCAAの利権を崩していった。
 いくつか知られている訴訟がある。2009年に「NCAA BASKETBALL 09」というビデオゲームが発売されると、1995年のNCAAトーナメントで優勝したUCLAのメンバーだったエド・オバノンが反トラスト法違反で、ゲーム会社、NCAAらを相手取って訴訟を起こした。選手の名前こそ使用されていなかったが、明らかに自分とわかる選手が登場しており、無断使用は搾取に当たると訴えたのだ。これには、オスカー・ロバートソン、ビル・ラッセルら、NBAのレジェンドらも原告に加わり、サポートした。

 2014年には、2009年からウエストバージニア大でランニングバックとしてプレーしたショーン・アルストンらが、カレッジアスリートらに対する対価が授業料、寮費など必要最低限に限定され、インターンシップの収入にも制限がかかっていることはやはり、反トラスト法違反だと訴えた。
 いずれのケースも、NCAA側が抵抗したため決着は連邦最高裁までもつれたが、ともに彼らが敗訴という結果に。アルストンの訴訟は、2021年6月に結審したが、その2年前——2019年9月にはカリフォルニア州において、カレッジアスリートが、氏名、画像、肖像の利用によって利益を得ることを阻止してはならない、という法律が成立しており、その後、20を超える州が同様の動きを見せたため、もはやNCAAはその流れには抗えなかった。
 結果として2021年7月1日からカレッジアスリートが企業と独自に契約することが正式に解禁となったのだが、実際はその年の4月に、オレゴン大3年のアメリカンフットボール選手だったケイボン・ティボドー(現ジャイアンツ)が、フライング気味にアディダスと最大100万ドル(約1億4900万円)の契約を結んでおり、それがNIL契約第1号となった。

 当然ながら、露出が多く、市場規模の大きなアメリカンフットボール、バスケットの選手がもっとも恩恵を受けているが、ルイジアナ州立大4年のオリビア・ダンという女子体操選手やフレズノ州立大の双子の女子バスケット選手(ハンナ/ハリー・カビンダー。ハリーは昨年、マイアミ大に転校)らもNIL契約を結び、彼女たちの場合は、SNSでのフォロワー数の多さが、スポンサーを惹きつけた。
 平均契約額はせいぜい1,000(約14万9000円)〜10,000(約1490万円)ドルと見積もられているものの、ダンの契約総額は340万(約5億円)ドルと報じられている。レブロン・ジェームズ(レイカーズ)の息子、ブロニー・ジェームズ(USCバスケット部1年)はナイキなどと契約をかわし、その総額は720万ドル(約10億7000万円)に達しているそうで、それは NBAの新人最低年俸の7倍近い。ブロニーの実力はそこまで高くないので、やはり父親のネームバリューと、1000万人を超えるSNSのフォロワー数がものをいっている。

 

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