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ドラフト候補だった花巻東の佐々木麟太郎は米国の大学への留学を決断(写真・日刊スポーツ/アフロ)
ドラフト候補だった花巻東の佐々木麟太郎は米国の大学への留学を決断(写真・日刊スポーツ/アフロ)

10億円を稼ぐ学生アスリートも…NPBドラフトより米国留学を選んだ“怪物スラッガー”佐々木麟太郎が切り拓く新しいアマ選手の可能性とは?

 米YAHOOスポーツによれば、NIL解禁初年度の契約総額は9億1700万ドル(約136億円)。「On3 NIL」というサイトが、NIL契約のランキングを発表しているが、それによると現在、25選手が総額で100万ドル(約1億4900万円)以上を稼ぎ出す。
 大学野球の場合、アメリカンフットボールやバスケットボールに比べればマーケットが小さいので、100万ドル(約1億4900万円)を稼いでいるアスリートはいない。今年5月の時点では、佐々木も見学に訪れたと伝えられるバンダービルト大のエンリケ・ブラッドフィールドJr.(今年のドラフトでオリオールズが1位指名=全体17位)の59万ドル(約8700万円)が最高額だが、大学野球の場合は、企業がチーム全体をサポートするケースが多いよう。

 ここで佐々木に戻すが、彼の注目度を考えれば、日米の企業が、彼をサポートしようとNIL契約を申し出てもおかしくない。進学先によっては、すでにチームが企業と契約をしているなら、その一部を受け取れる。活躍、露出の度合いによっては、年俸に換算した場合、日本でドラフトされるよりも、多くの額を1年で稼ぐことになるかもしれない。
 今後、例えば、松坂大輔(横浜)、松井秀喜(星稜)、斎藤佑樹(早稲田実業)、田中将大(駒大苫小牧)らのような超高校級が現れ、そんなレベルの選手が留学を表明すれば、渡米前からオファーが殺到するケースも考えられる。
 学生ビザではNIL契約を結べないのでは、との見方もあるようだが、事情を知る米弁護士は、「当然、アメリカ人のアスリートと比べればやや複雑だが、そのようなことはない」と答えた。「留学生であっても、その資格はある」。

 八村塁(ゴンザガ大→ウィザーズ、レイカーズ)の渡米が21年7月以降であったなら、彼もまた在学中にNIL契約をかわしていたのではないか。
 留学すれば、日米のドラフトにかかる資格を得ることになるだけに、プロ入りの選択肢も広がって、メジャーを目指すのであれば、近道にもなる。
 米4年制大学へ進学した場合、3年終了時、もしくは21歳になっていることが大リーグのドラフトで指名される条件。佐々木の場合、2024年の9月入学。3年終了時となると27年だが、26年4月には21歳になるので、最短で26年7月のMLBドラフトにかかる。
  佐々木が留学中にNIL契約をかわし、さらに大リーグのドラフトにかかって、早々にメジャーへ進む道を示すなら、それは、限られたエリート高校生だけに与えられる特権ではあるものの、今後、彼らが目指す新たな場所となるかもしれない。
 そして、それははからずも、日本のアマチュアスポーツ界に一石を投じることにもなる。
(文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)

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