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三木谷オーナーが武藤嘉紀と歓喜の抱擁。経営を引き継いで20年目にして悲願を達成した(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
三木谷オーナーが武藤嘉紀と歓喜の抱擁。経営を引き継いで20年目にして悲願を達成した(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

なぜ神戸はイニエスタが去ってから悲願のJ1初Vを果たしたのか…三木谷オーナー「意見をぶつけあって生まれたスタイル」

 ヴィッセル神戸がクラブ創設29年目で悲願のJ1リーグ初優勝を果たした。本拠地ノエビアスタジアム神戸に名古屋グランパスを迎えた25日の明治安田生命J1リーグ第33節で、前半12分と14分にFW大迫勇也(33)のアシストから連続ゴール。名古屋の反撃を1点に抑えて2-1で逃げ切り、最終節を残して2位の横浜F・マリノスとの勝ち点差を4に広げて頂点に立った。昨シーズンは残留争いを強いられた神戸がなぜ首位を快走し、11クラブ目となる優勝を勝ち取ったのか。

 バルセロナ化との決別

 

 後半アディショナルタイムに入った時点で、2点目を決めたFW武藤嘉紀(31)はもう泣いていた。優勝を告げる主審の笛が鳴り響くと、キャプテンのMF山口蛍(33)やMF酒井高徳(32)も涙腺を決壊させる。そして、2アシストの大迫は雄叫びをあげた。
「このために日本に戻ってきたので。最高です」
 歓喜の余韻が残る試合後の公式会見。神戸の吉田孝行監督(46)が言う。
「シーズンの開幕前はメディアのみなさんも含めて誰ひとり、ヴィッセル神戸が優勝する姿を想像できなかったと思います」
 無理もない。昨シーズンは開幕から11戦連続白星なしの泥沼にあえぎ、代行を含めて4人もの監督が指揮を執る混乱に陥った。6月末に3度目の登板を果たした吉田監督のもと、残り2試合でようやく残留を勝ち取った。最終的な順位は13位。最終節はノエビアスタジアム神戸でマリノスに完敗し、目の前で優勝する姿を見せつけられた。
 一転して今シーズンは3連勝発進し、その後も快調に勝ち点を積み重ねる。5位タイだった開幕節を除けば、一度も3位以内から脱落しないまま、しかもほとんどで首位をキープしたまま歓喜の雄叫びをあげた。いったい何が変わったのか。指揮官が続ける。
「自分たちは昨シーズン、実は確かな手応えをつかんでいた。どうすれば勝てるのか、に気づいた。なので、自分としては自信があったし、開幕からすべて決勝戦のつもりで戦ってきた。その積み重ねのなかで、選手たちが妥協せずに本当によく戦ってくれた」
 吉田監督の再登板後に3連勝をマークした昨シーズンの神戸は、高温多湿の夏場に再び失速する。降格の二文字がちらついてきったなかで、チームとして腹を割って話し合った。テーマは戦い方の転換。スペインの至宝、司令塔アンドレス・イニエスタ(39)が加入した2018年夏から掲げてきた「バルセロナ化」とあえて決別した。
「もっと、もっと前からいくんだ、という方向に転換しました」
 こう振り返った吉田監督のもと、コンディション不良のイニエスタを欠きながら、それでも終盤戦に14年ぶりとなる5連勝をマーク。新しいスタイルで残留を手繰り寄せた成功体験が、今シーズンにつながるターニングポイントになったとこう続ける。
「自分自身、前線からのプレッシングがもともと好きだったし、そこに関しては選手たちも同じ意見だった。だんだんと手応えをつかんだなかで、終盤戦の5連勝で自分たちが本当にやらなきゃいけないプレーは何なのかが明確になった」

 

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