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三木谷オーナーが武藤嘉紀と歓喜の抱擁。経営を引き継いで20年目にして悲願を達成した(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
三木谷オーナーが武藤嘉紀と歓喜の抱擁。経営を引き継いで20年目にして悲願を達成した(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

なぜ神戸はイニエスタが去ってから悲願のJ1初Vを果たしたのか…三木谷オーナー「意見をぶつけあって生まれたスタイル」

 迎えた今シーズン。キャンプの段階から、復調気配にあった大迫をターゲットマンにすえるスタイルに移行した。もちろん、生命線から前からの積極果敢なプレッシング。たくましく走れて、球際の攻防に強くて、がむしゃらに頑張れる選手が起用された。
 しかし、無骨なハードワーク軍団と化した神戸に、イニエスタの居場所はなくなりつつあった。夫人のアンナさんの第5子出産に立ち会うため、開幕直後に一時帰国したレジェンドは3月中旬に再来日。練習で万全をアピールするも出場機会は著しく限られた。
 神戸に対するイニエスタの貢献度は理解している。それでも過去2度はともに成績不振でシーズン途中に解任されている吉田監督は不退転の覚悟を込めて、最適解だと定めた戦い方を貫いた。指揮官の背中がチームの一体感を高めたと大迫は言う。
「タカさん(吉田監督)自身、難しい決断というものがたくさんあったと思う。それでも先頭に立って『これだ』と示し続けてくれた。本当に説得力があった」
 イニエスタ自身も吉田監督の決断を尊重していた。しかし、時間の経過とともに、より多くの出場機会を望む現役選手としての自分が上回るようになり、契約を半年間残した状態で、7月1日の北海道コンサドーレ札幌戦を最後に退団した。
 いま現在はUAE(アラブ首長国連邦)のエミレーツ・クラブでプレーする、イニエスタの退団を問われた指揮官は「難しい質問ですね」と苦笑しながらこう続けた。
「アンドレス(イニエスタ)に限らず、試合出場を望んで新しい場所を求める選手はいる。そのなかでお互いにプロとして、自分は試合に勝つための決断を下しました」
 自らが獲得に奔走したイニエスタを欠きながら快進撃を続けた神戸を、オーナーでもある三木谷浩史会長(58)はどのように受け止めていたのか。
「サッカーの戦略や難しい話は、専門家に任せた方がいいと思うんですけど」
 場所を神戸市内のホテルに移して行われた優勝会見。神戸の親会社、楽天グループのトップを務める三木谷会長はこう断りを入れた上で、会見に同席した大迫、武藤、山口、酒井、そして吉田監督へ全幅の信頼を置きながらこう続けた。
「今シーズンはここにいる選手たちを中心に、かなりオープンに意見を言い合える、風通しのいい環境にあったと思っています。そのなかで監督と選手たちの間で、どのようなサッカーをやれば勝てるのか、という議論がかなり出されたとも聞きました」
 J1戦線を席巻し続けた今シーズンの神戸のスタイルは、自らが望んだ「バルセロナ化」とは対極に位置するものだった。中心にすえていたイニエスタも去った。代役の意味も込めて獲得した元スペイン代表のMFフアン・マタ(35)は出場わずか1試合。それでも、三木谷会長は満足そうな表情を浮かべながら、右隣にいた吉田監督へ同意を求めた。

 

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