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ネクストモンスターの中谷潤人が適正階級のバンタム級で衝撃TKO勝利。史上7人目の3階級制覇だ(写真・山口裕朗)
ネクストモンスターの中谷潤人が適正階級のバンタム級で衝撃TKO勝利。史上7人目の3階級制覇だ(写真・山口裕朗)

衝撃6回TKO勝利で全米を驚かせた3階級制覇王者の中谷潤人の何がどう凄かったのか…計算尽くされた左ストレートと“ネクストモンスター”の資格…V1戦はフィリピン強豪と指名試合

 WBCの緑のベルトを会見場に持ち込んだ中谷は、「凄く感慨深いものがある。ボクシングに出会えてよかった」としみじみ語った。
 “カリスマ”辰吉丈一郎、長谷川穂積、“ゴッドレフト”山中慎介、そして“モンスター”井上尚弥と、日本のボクシング史に残る名王者たちが巻いてきたベルトを継承した。
 それでも中谷は「比べるというよりは、僕のコンテンツというか、色を見てもらえれば嬉しい。また違った中谷潤人を楽しんでもらいたい」と言う。
 米の権威ある専門誌の「ザ・リング」は「歴史的な夜。中谷はキャリアで最も印象的な勝利を収め、3階級制覇を果たした」と評価。前出の「ボクシングシーン」も「バンタム級での初戦でWBCタイトルを獲得し、これまで君臨していたスーパーフライ級やフライ級よりも新しい階級にふさわしい存在であることを示したのかもしれない」と指摘。
 計量の当日に朝食を食べられるほど減量苦から解放され、本人が「減量のダメージが少ない」と実感したバンタム級が適性階級であるとの見解を示した。
 手数に加え、間をつなぐ細かいパンチのキレなど、明らかにこれまでの階級の中谷とは、違って見えたが、本人は「(映像を)見返してみますが、今まで通りで変わらない。減量の段階では、ちょっと楽だったが、試合に上がる感覚やパンチのキレ、当たれば倒れるという感覚はこれまでと変わらない」と否定的なのだ。
 だが、バンタム級の戦いで人々の見る目が変わったようには感じた。
「見ていて楽しい試合をするのがプロ。僕が倒すシーンだったり、そこに期待してくれる人が増えてくれればいい。バンタム級でより期待してくれている部分を感じている」
――中谷のボクシングはどこが楽しい?
「特徴がないというか、ここが強いというインパクトはないかもしれないが、遠い距離でも、近い距離でも対応ができる。どうノックアウトするかを見て、また違ったボクシングの楽しみ方をしてもらえれば」
 次戦は、挑戦者決定戦を勝ち抜いたヴィンセント・アストロラビオ(フィリピン)との指名試合となる。WBO世界同級王座決定戦でジェイソン・モロニー(豪州)に判定で敗れたが、井上尚弥と対戦した元WBA&IBF世界スーパーバンタム級王者、マーロン・タパレス(フィリピン)のスパーリングパートナーを務めてきた強敵である。
 だが、中谷が見据えるのは、もっと先だ。今回のタイトル挑戦を「(将来の)ビジョンを抱けるような試合にしたい」と位置づけていた。
「KO負けのない選手にTKO勝利して自信になった。ファンの方も、そして自分自身も、さらに上を見ていけるかなと」
 そのさらに上にあるビジョンとは?
「統一戦。そしてパウンド・フォー・パウンド入りすること。そこに向けてビッグファイトをしていきたい」
 リングサイドにいたIBFを除く3団体のオフィシャルの間からは「井上尚弥への対抗馬が出てきた」と気の早い声も聞かれた。
 バンタム級で覚醒したネクストモンスター。米ロスをトレーニング拠点としていて、国内の知名度よりも、米国での評価の方が高いという不思議な現象を起こしてきた“本物”中谷が、ついに国内リングで、その全貌を見せたのである。

 

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