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JBCが穴口選手の死去を受けて「事故検証委員会」を設置した(写真・山口裕朗)
JBCが穴口選手の死去を受けて「事故検証委員会」を設置した(写真・山口裕朗)

「青木真也の提言は無視できない問題」JBCが穴口一輝選手の日本タイトル戦での死去を受けて「事故検証委員会」を設置

 穴口選手の事故の原因を究明する中で検証しなければならない問題はいくつかある。
 試合中のレフェリングに問題はなかったのか。穴口選手が頭を下げる場面が多々あり、偶然、堤のパンチが後頭部に当たるシーンもあった。試合終了後にリング上で異変を見せた穴口選手は、トレーナーの肩を借りて歩いて控室に戻ったが、なぜ担架が使用されなかったのか。
 そして試合に臨む穴口選手に減量の影響はなかったのかどうか。英国では急激な水抜きによる減量を避けるためにサウナの禁止などをルール化している。また試合前のスパーリングで過度なダメージの蓄積はなかったのか、という点も調査しなければならない。過去にはスパーリングで事故が起きたケースもある。
 そして、そもそもアマ実績があるとはいえ、デビュー3年目、プロ7戦目の穴口選手とキャリア豊富で世界ランカーの堤のタイトル戦を認定してよかったのか、という議論もある。トーナメント方式ゆえに勝ち進めば必然的に組まれるカードだったが、トーナメント戦には参加資格の厳格化を求めるべきではないか、との意見もある。
 2009年3月の日本ミニマム級王座決定戦で試合後に辻昌建選手(帝拳)が最終ラウンドにKO負けを喫した後に亡くなる事故があり、以降、インスペクターを両コーナーに配置してラウンド間の様子をチェックするシステムが導入された。またMRI検査も義務化されている。だが、そこから15年が経過し、各種トレーニングの進歩により、ボクサーのフィジカルや打撃力が急激に強化された。そのオフェンスの進歩にディフェンスのスキルが追いついているのか、との議論もある。
 また現在10ラウンドとなっている日本タイトルのラウンド数などについて、萩原コミッショナーは「現状は日本タイトル戦は10ラウンドですが、ラウンド数として、それが適正なのかどうかも検討の遡上に上がるでしょう」と言う。
 ただ日本タイトルを8ラウンドなどにした場合、世界戦が12ラウンドなのだから、世界で戦うための国内での競争力が弱くなり、ボクサー個々のレベルアップに影響が出るというリスクもある。いずれにしろ、あらゆる角度から専門家の意見を聞き、議論した上で再発防止策を練り上げる必要はあるだろう。
 今回の事故検証委員会の第1回目の会議は15日に行われ、4月15日までに報告書、提言をまとめてJBCに提出される予定。WBA世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(志成)が2022年大晦日の世界戦のドーピング検査で大麻成分が検出された問題の処分決定が3月7日付で行われるなど、組織の意思決定のスピード感のなさが指摘されていただけに今回は迅速なスケジュールが組まれた。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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