「成長?ない。練習量が少ないんよ」辰吉丈一郎が次男の寿以輝が西日本新人王を倒せず2-0判定勝利に終わった再起第3戦にダメ出しをした理由とは…「タイトル挑戦?あかんやろ」

せっかくコントロールできていたジャブも少ないように感じたが父は、「あれはジャブじゃなくストレート。ジャブを打っていないから、あんなことになる」と、その場でジャスチャーを交えて“遊び”と“ジャブ”について説明を始めた。
「ジャブを当てようとすると前へいって打ち合いになり、打たれてしまう。もっと相手を散らしていなす。打って離れる。そうすると相手が出てくるので、そこにカウンターを合わすことができる。出てくるのを止めるとこちらが追い打ちできる。でもそういう練習をやらんとできん。倒したいなら倒せる練習をすればええ」
リング上で、寿以輝は「決まったらいつでもやる」と、2度目の地域タイトル挑戦に意欲を燃やしたが、「あかんやろ」と反対を唱え、「練習量が少ないんよ。オレからしたら」とGOサインを出さなかった。
辰吉は寿以輝の囲み取材が終わるタイミングで控室に乱入してきた。
「遊びのつもりでいった?」
「もっと走れ!」
直接苦言を呈した。
「走っているから」
寿以輝がそう逆らうと「いや動きでわかるんよ」とニヤリ。
いつもの親子漫才のような親子喧嘩に発展しそうになると、寿以輝が「お疲れ様でした。もう帰って。頼むわ」と冗談交じりに退室を促した。
辰吉のアドバイスは的を射ていた。豊永のパンチがしっかりと見えた上でプレスをかけて突破口を開けなかったのだから、もっと“誘い”の駆け引きで揺さぶってよかった。これで21戦18勝(10KO)1敗2分けのキャリアとなったが、まだ引き出しが足りない。父からすれば、せっかくのポテンシャルを持て余していることが我慢ならないのだろう。
父は「ない」と断言したが成長の跡はあった。
吉井寛会長は「戦い方は変わった。相変わらず悪いクセも出ているが、前回引き分けた後に練習してきた“力を抜く”ことができていたと思う。見つめあう時間も減ったしね」と評価した。パワーで倒すのではなく、キレとタイミングで倒すことを追い求めた。寿以輝も「これまでに比べると(パンチが)コンパクトになった」との手応えをつかみとってはいた。
リング上のインタビューでは突然、絶句し涙ぐんだ。
「弔いとしてしっかりと勝つことができてよかった」
父のデビュー戦時から応援してくれていた私設応援団「辰吉丈一郎を見守る会」の会長だった林英明さんが、5月に突然亡くなった。53歳だった。
「親父の代から応援してくれていて…」
サングラスがトレードマーク。のぼりや横断幕を用意してくれて、いつも大声で「寿以輝コール」をしてくれたのが林さんだった。
見守る会のメンバーの一人は、「今回は見に行けないかもしれないが、次は応援にいきたいと言っていたんですが…」と故人を偲んだ。

