「成長?ない。練習量が少ないんよ」辰吉丈一郎が次男の寿以輝が西日本新人王を倒せず2-0判定勝利に終わった再起第3戦にダメ出しをした理由とは…「タイトル挑戦?あかんやろ」
悲しい出来事はそれだけではなかった。
当初、金子ジムの日本11位の「警察官ボクサー」の杉田ダイスケ氏が、この日の対戦相手だった。だが、6月1日、杉田氏は帰らぬ人となった。
吉井会長は「時間がないからもうマッチメイクは難しいかも。寿以輝抜きでも興行を」と覚悟していたが、その状況を知った豊永陣営から逆オファーがあった。
「食ってやると。自信があったのでしょう」
吉井会長は、亡くなった杉田氏のご家族や、金子ジム、そして寿以輝への心理的な影響を配慮して今回の試合決定の記者会見をあえて開かなかった。
その動揺があってしかるべき緊急事態にも寿以輝は平静を見失わなかった。
「なんとも…でも、お亡くなりになったので…」
物心がついた頃から父親の波瀾万丈の人生を見てきた。背負うものが多くてもそれを力に変えることができるのもまた辰吉家の遺伝子だった。
2024年12月のOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルマッチで、中嶋一輝(大橋)に2回TKO負けして以来、再起戦を3試合負けなしで消化した。
だが、そのリベンジを誓った中嶋は、足首の怪我で9月2日の大湾硫斗(志成)とのタイトル戦は延期となったもののフェザー級転向を決めて再戦は実現できなくなった。それでも寿以輝の最終目標にブレはない。
「ショックはない。(中嶋は)僕が唯一負けた人。尊敬しているし、フェザー級の戦いを応援している。僕の目的は世界チャンピオン、そこだけ」
ただ世界切符をつかむには、地域タイトルというパスポートが必要になる。候補は3人。寿以輝との対戦が一度は内定していたOPBF東洋太平洋王者の石井渡士也(RE:BOOT)、その石井を破って日本王者となった池側純(角海老宝石)、そしてWBOアジア・パシフィック王者がガブリエル・サンティシマ(フィリピン)だ。このうち池側とサンティシマは寿以輝が苦手とされるサウスポー。相性としては、石井が最もいいが、配信局の問題などがあり実現は簡単ではない。
寿以輝は「サウスポーは苦手やないんですけどねえ。たまたま試合した相手が苦手やっただけ。決まれば誰が相手でもやりますよ」と大きく手を広げた。
「判定が続いているので次はKOで勝ちたい」
今月3日で30歳になった寿以輝。
個人的な感情があることは否定しないが、寿以輝には人々を惹きつける非凡な魅力がある。しかしまだ覚醒はしていない。いつもいつも言葉にはしないが、尊敬している父の背中を追ったボクシング人生の時間はそう多くは残されていないのだ。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

