不服は正しいか?「ダウンも取ったし負けた気がしていない。ボクシングで負けた」那須川天心が井上拓真から7回に衝撃ダウンを奪うも0-3判定に疑問…激闘の裏にあった父からの「引退勧告」
そして1万人の天心コールを忘れてはいない。
「助けられた。最後のひと押し、前に出れたのもみなさんの声援が力になった。胸を張って、堂々とこのまま生きていきたいと思った」
天心の哲学には反するのかもしれないが、倒して勝つだけがプロボクシングではない。1ラウンド、1ラウンドの駆け引きだけではなく、12ラウンドトータルでのマネージメント勝負もある。1度のダウンでは10-8とつけるシステムなのだから、2ラウンド分を挽回するだけに過ぎない。その昔、亀田興毅がファン・ランダエダにダウンを奪われながらも判定勝利で世界ベルトを奪取したことで「疑惑の判定」「八百長だ!」とアンチにバッシングされていた。必ず優劣をつけるラウンドマストの判定システムでの12ラウンド制のボクシングで判定決着になれば起こりうることで「負けた気がしないけれど負けた」という試合は珍しくなく勝者は試合巧者と称賛される。
浜田代表は「約30年になりますけど、この採点基準はボクシング関係者でさえも真っ二つに割れるところがありますから。常に優劣をつけるのは難しいものだと何回やっても思う」とも語ったが、それは、今さら論。オフィシャルがノーダウンと判定した拓真が右手でロープを持ったシーンがダウンだったとしても10―7で116-111とつけた2人のジャッジの勝敗は変わらない。
アマチュア経験があり、世界戦9度の拓真が、まだプロ10戦目で世界戦がこれで2戦目の天心よりも試合巧者だったのだ。
天心もそれを理解しようとしている。
「ボクシングはこんなにも難しいのか。倒すだけ、ダメージだけがボクシングじゃない。ちょっとしたポイント、優位にみせるその学びが必要。経験、実力不足ですからね」
敗れてなお天心の評価は下がらない。この試合内容であれば天心の世界ランキングもそう落ちないだろう。
WBAは同門の増田陸が王者で難しいが、WBOはジェシー“バム”ロドリゲス(米国)の対戦候補として名前のあがっているスパーリングパートナーだったクリスチャン・メディナ(メキシコ)、IBFはホセ・サラス・レイジェス(メキシコ)が王者でいつ挑戦機会が巡ってきても不思議ではない。拓真サイドは「これが最後」と3度目の対戦の可能性を強く否定したが、兄の尚弥に並ぶ4団体統一を目指しているだけに天心が他団体の王者になれば、必然的に「人生を賭けた」リベンジロードは、ここが終わりではなくなる。

