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J2甲府の吉田監督は4バックから3バックに変えて鹿島対策を練った(資料写真:森田直樹/アフロスポーツ)
J2甲府の吉田監督は4バックから3バックに変えて鹿島対策を練った(資料写真:森田直樹/アフロスポーツ)

なぜJ2甲府は天皇杯準決勝でJ1鹿島を倒す”ジャイアントキリング”を成し遂げたのか?

 天皇杯の準決勝2試合が5日に行われ、J2のヴァンフォーレ甲府が鹿島アントラーズを1-0で撃破するジャイアントキリングを達成した。敵地・茨城県立カシマサッカースタジアムに乗り込んだ甲府は、前半37分にFW宮崎純真(22)が決めた技ありの先制ゴールを死守。クラブ史上で初めて、J2勢としても2014年のモンテディオ山形以来となる決勝進出を決めた。16日に日産スタジアムで行われる決勝でサンフレッチェ広島と対戦する。

 決勝ゴールの宮崎「プロになってホームでしか点を取っていなかった」

 

 甲府の歴史を変えたヒーローの一人、宮崎のテクニックにまず驚かされた。
 両チームともに無得点で迎えた前半37分に決めた値千金の決勝ゴールを巻き戻していくと、自陣の中央からDF浦上仁騎(25)が放ったロングパスに行き着く。
 あうんの呼吸で鹿島の最終ラインの裏へ抜け出しながら、ボールがピッチに弾んだ直後に右足のスパイク裏でファーストタッチ。そのまま自分の前方へボールを運び、ペナルティーエリア内へ侵入した刹那に、飛び出してきたGKクォン・スンテ(38)をも軽やかにかわした。
 スピードをまったく落とさないまま、右足で無人のゴールに流し込むまでの芸術的な流れを、山梨学院高から加入して4年目の宮崎は「トラップで決まりましたね」と笑顔を浮かべながら自画自賛した。もっとも、次に飛び出した言葉にはさらに驚かされた。
「プロになってホームでしか点を取っていなかったので、この大一番でゴールできてよかったです」
 過去の記録を調べてみると、鹿島戦の前までに宮崎が公式戦で決めた計10ゴールの舞台は、確かにすべてホームのJITリサイクルインクスタジアムだった。
北海道コンサドーレ札幌との3回戦を皮切りに、サガン鳥栖、アビスパ福岡と立て続けにJ1勢への“下克上“を成就。ついに常勝軍団・鹿島との準決勝でも痛快なジャイアントキリングを達成するなど、波に乗っているチームにはこんなラッキーボーイも出てくるのか。
実は、J2リーグで勢いに乗ってきたわけではない。
 宮崎の一発を含めて大量5ゴールを奪い、ホームでFC琉球に快勝した8月6日を最後に、実に10試合も続けて勝ち星から遠ざかっているのだ。内訳は4戦連続ドローの後に泥沼の6連敗。そのうち零封負けが4を数え、残る2試合も最少得点に終わっている。
 22チーム中で18位にあえぎ、残り3試合の結果次第ではJ3へ降格する恐怖も忍び寄っている。なのに天皇杯ではクラブ史上で初めて、J2勢としても2014年の山形以来、8大会ぶりに決勝へ進む快挙を達成した。壮大なるギャップをどのように説明すればいいのか。
 札幌との3回戦で同点&逆転の2ゴールを、福岡との準々決勝でも先制ゴールを決めたFW三平和司(34)が苦笑しながら、J1勢からもぎ取った勝利を振り返ってくれた。
「札幌は少しメンバーを落としてきましたし、鳥栖はコロナの影響で全員のコンディションがよくなかったし、福岡もリーグ戦の方に集中させたいからとメンバーを落としてきていたので、ちょっと隙はあったんですよね。なので、そこまでは勝てる感じはあったんですけど」

 

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