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”親友”井上尚弥(右)の助言でボクシング挑戦を決断した元Jリーガーの山口聖矢(左)がプロテストに一発合格した(写真・山口裕朗)
”親友”井上尚弥(右)の助言でボクシング挑戦を決断した元Jリーガーの山口聖矢(左)がプロテストに一発合格した(写真・山口裕朗)

”親友”井上尚弥の助言でボクシング挑戦を決断した元Jリーガの山口聖矢がプロテストに一発合格…その潜在能力と可能性とは?

JBC(日本プロボクシングコミッション)のプロテストが29日、東京・後楽園ホールで行われ、バンタム級の世界3団体統一王者、井上尚弥(29、大橋)の親友で元Jリーガーの山口聖矢(29、大橋)が受験、C級で合格した。3年前にJ3のSC相模原を最後にサッカー界から引退、何の刺激もない人生に思い悩んでいたが、今年1月に井上からボクシング転向を勧められて決断。わずか11か月でプロテストに合格するまでに急成長し、パンチ力に非凡さがあり大橋秀行会長を「素人からプロになれたのは大橋ジムでは史上最速。左フックが凄い」と驚かせた。W杯カタール大会に出場している伊東純也(29、スタッド・ランス)と大学時代に対戦経験のある山口は、「ベストメンバーでスペインが2位狙いならばチャンスもある」とエールを送った。

左フックに非凡な威力

 異色のプロボクサーが誕生した。
 元Jリーガーで井上の大親友である山口が29歳にして一念発起。プロテストに合格してボクサー転向への第一歩を踏み出すことに成功したのだ。
「相手がサウスポーということもあって普段とは違った。もう少しできたかな。スタミナはそんなに苦しくなかったけど、もっと前へ出たかった」
 大橋会長、井上真吾トレーナー、現役復帰した元日本&WBOアジアパシフィック・スーパーライト級王者の井上浩樹らが見守る中で行われた2ラウンドのスパーリングでは、慣れないサウスポーの同じ受験生を相手にワンツーを軸にプレッシャーをかけた。
 1ラウンドは、さすがに緊張からか、手数が出ずに序盤に左のカウンターをもらう場面もあったが、低い重心からの突き刺すようなワンツー、右のボディストレートは基本に忠実で威力を感じさせた。
 2ラウンドは力みも取れ、元Jリーガーらしくサイドへのステップも披露。ガード、ブロック、ダッキング、スウェーなどのディフェンス技術に加え、何より、ステップワークを駆使した距離感の作り方が、挑戦わずか10か月のボクサーには思えなかった。大橋会長が、山口の武器だと認める左フックを放ったところでゴングが鳴った。
 井上からは「テストなのでジャブ、ワンツーという基本を大事に」というアドバイスをもらって送り出された。その言葉をリングで実践した。当初は井上も後楽園に応援に来る予定だったが、WBO世界バンタム級王者、ポール・バトラー(34、英)との4団体統一戦を2週間後の12月13日に控え、大橋会長がストップした。

 井上とは竹馬の友だ。通っていた幼稚園が同じで、年少の頃、たまたま靴が色形からサイズまで同じだったため、片足ずつ間違って自宅へ履いて帰ったことが縁で意気投合。家族ぐるみで仲良くなった。
「当時は尚弥も同じ幼稚園のサッカークラブでサッカーをしていた。足が速くて上手かった」という。その後、井上はボクシング、山口はサッカーへと、進む道は違ったが、以来、26年交友は続き、互いに切磋琢磨してきた。
 山口が「信頼できる友人でもあり、スポーツ、生活面でも刺激を受けて尊敬できる」と井上を語れば、井上は、「一緒にいて互いに1時間無言でも、心地よくて、わかりあえる相手っているでしょ?聖矢は、そういう親友」と言う仲だ。
 Jリーガー時代の山口のポジションはディフェンダー。山梨学院高から関東学院大へ進み、地域リーグのサウルコス福井に所属し、その後、のSC相模原でJリーガーになったが、J1ではプレーできず、2018年のシーズン限りに26歳で引退した。当時、進退の相談を受けた井上は、「自分の思いだけで先が見えずサッカーで稼げないのであれば現役続行は反対。第2の人生へ進むのなら早い方がいい」と引退を勧めた。山口は、実家が経営している自動車整備工場で働きだした。部品を作る仕事だ。
 だが、サッカーという生きがいを失った山口は、それから2年間、「何か刺激が欲しい」と思い悩む。井上兄弟らのロードワークには参加していたが、そのうちついていけなくなった。

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