WBC優勝で佐々木朗希の何がどうスケールアップしたのか…日ハム相手に6回11奪三振無失点で今季初勝利
この状態で直球を思い切り投げ込めば、向かい風にあおられてどうしても浮き気味になる。対照的に変化球は向かい風にまともにぶつかる影響で、他の球場に比べて変化する幅が大きくなるとされている。佐々木の決め球、フォークだと落差がさらに増す効果を生む。
どんなに速くても、コースが甘ければ痛打されるのがプロの世界。初回に万波を出塁させた佐々木が「自分のペースで投げられた」と振り返ったのは、2回までに13球を数えていた160km台の直球を、3回以降はあえて1球にとどめた点を指している。
剛速球と入れ替わるようにフォークの割合が急増した。象徴的だったのは6回だ。先頭の8番・宇佐見真吾は155kmの直球で、二死後に迎えた五十幡には159kmの直球でともにストライクを先行させ、直後に3球連続でフォークを投じて空振り三振に仕留めた。
佐々木にとって実働3年目で、通算21度目の本拠地登板だった。しかし、14mに達する強風はほとんど体験していない。それでも、自然環境へ瞬く間に対応。直球を抑え気味に投じただけでなく、配球自体も大きく変えた姿に、吉井監督も思わず目を細めている。
「立ち上がりから風が強かったなかで、しっかり彼のピッチングをしてくれた。(WBCとの)ボールの違いもあまり気にしていなかったので、上手く(試合に)入っていけたと思います」
打順が2巡目に入った4回には、習得したばかりの武器も解禁した。
先頭の万波と3番・松本剛への4球目、そして4番・野村佑希への初球に投じたのはスライダー。しかし、昨年も投げていたスライダーとは軌道がまったく違う。世界一を奪還するまでの侍ジャパンでの日々でパドレスのダルビッシュ有から伝授された、最近では「スイーパー」と呼ばれる、横滑りしていく幅がさらに大きい軌道が対峙する打者を惑わせた。
5回一死で迎えた6番・マルティネスへの2球目にも、佐々木はスライダーを投じている。はたして、外角へ大きく逃げていく139kmのそれに繰り出したバットはまったく届かず、続く3球目の144kmのフォークでハーフスイングを取られてあえなく三振に倒れた。
終わってみれば、初回一死一塁で迎えた松本から6回の五十幡までの17人を連続して凡退させ、そのうち「11」アウトを空振り三振で奪った。4回の野村から5回の5番・清宮幸太郎、マルティネス、7番・上川畑大悟、6回の宇佐見までは5者連続で空振り三振に仕留めた。
被安打わずか1で、与えた四死球もゼロ。3ボールになったのもたった2度と、日ハム打線につけいる隙をまったく与えなかった圧巻のピッチングに、ライトスタンドを埋めたロッテファンからは絶えず「ササキ、ササキ、ササキ」と大音量のコールが響きわたった。
今シーズンから全面的に解禁された、声を出しての応援の壮観さを物語る光景。しかし、マウンド上の佐々木本人はいまひとつピンと来ていなかったという。
「最初は『ササキコール』だったので誰のことかな、と思っていたんですけど。途中から自分のことだと思って、本当にありがたいですね」