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井上尚弥がフルトン戦に向けての公開練習を30秒で切り上げた(写真・山口裕朗)
井上尚弥がフルトン戦に向けての公開練習を30秒で切り上げた(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥はフルトン戦前の公開練習をわずか30秒で切り上げて「一発が当たれば間違いなく終わる」と豪語したのか…1.8キロ増で生まれた確かなる根拠

 公開練習に先立って行われた質疑応答で、井上は、試合の作戦について「自分の頭の中では固まっている」としたものの、珍しく、それ以上は口にチャック。試合の入りや展開は?と聞かれても「今は言えない」と返しKO宣言を求めた記者には「今はそれを言う必要はない」と回答した。
 その裏にあるのは、井上もまたフルトンとの試合が「頭脳戦になる」と踏んでいるからである。
 フルトンは、ディフェンス能力が高く、ロングレンジの戦いと密着戦をたくみに使い分けて危機管理を徹底しながらポイントを重ねていく完成度の高いボクサーである。前日の会見でも「ボクシングは第一に頭を使って賢くやらねばならない。ただそれだけでなく(攻撃的なボクシングも)ミックスして戦っていく」と語り、ポイントアウトを徹底してベルトを守るという戦略を明かしている。
 だが、それもすべて井上の想定通り。
「フルトンのスタイルからすれば、賢く戦うしかない。それよりも、自分がどう賢く戦うか。頭脳戦になると思う。当日、一瞬でもミスをした方がペースを失う、ヒリヒリとした戦いになると思う」
――スピードとパワーで圧倒するのではないのか?
「それはもちろんだが、それよりも大事なのは、より考えること」
 フルトンは倒しにはこず、テクニックを駆使したボクシングで勝ちにくる。井上の長所を消し、空回りさせにくる。
 それらをすべて理解した上で、“仮想フルトン”としてロマチェンコのパートナーを務めるなど世界的に評価の高いジャフェスリー・ラミド(米国)を招聘してスパーを重ね、リーチ差を埋めて懐に入る対策も、従弟でライト級の井上浩樹を相手にテストしてきた。筆者は、そういう頭脳戦の先に井上のKO決着が待ち受けていると見ている。
「一発が当たれば倒れるのでは?」と、話をふると胸に秘めた本音が漏れた。
「一発が当たれば、試合が終わるという自信を持って練習をしてきている。(一発が当たれば)間違いなく終わると思う」
 その根拠が、スーパーバンタム級に上げたことで生まれたプラス効果だ。井上は転級を決めた際に「スーパーバンタム級は倒しにいって倒せるような領域ではない。身長170、170前半の選手もゴロゴロいるし体力的には劣っている」と階級の体重差である1.8キロの壁についての不安を口にしていた。
 だが、拳のケガにより5月7日に予定されていた試合が7月25日に延期になったことで、転級への準備期間が、約半年に伸び、「パワーはもちろんスピードも増している。試合をしたわけじゃないので、その部分はまだわからないが、準備する過程で、手ごたえは十分にある。逆に、このスーパーバンタム級がベストなんじゃないかと。マイナス部分や不安はまったくない」との手ごたえを感じとった。

 

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