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タパレスは鋼のような肉体をしていた。それもそのはず当日の体重はスーパーライト級だった(写真・山口裕朗)
タパレスは鋼のような肉体をしていた。それもそのはず当日の体重はスーパーライト級だった(写真・山口裕朗)

井上尚弥がKOに時間がかかった衝撃理由が判明…タパレスの当日体重はスーパーライト級だった…やっぱり怪物「苦戦」への反論は正しかった

 過去に漫画の世界よりドラマチックな試合を見せ続けてきた。必然、求められているハードルは、かなり高くなっている。
 パウンド・フォー・パウンドのランキングを発表している米専門誌「ザ・リング」は、タパレス戦を受けて「パウンド・フォー・パウンドの1位は誰か?という議論が始まる。年間最優秀選手候補だ」と称賛した。現在の1位は7月に先んじて2階級4団体制覇を成し遂げたテレンス・クロフォード(米国)。世界最強の称号を手にするかもしれない井上への期待値が上昇するのも無理はない。
 試合後のリング上では井上が「一発(パンチが)効いた」と話をした音声が拾われていた。そのことについては、「知られたくなかった(笑)。効いていないっすよ(笑)」と笑って一蹴した。
「だいたい(パンチを)見切れていた。何回か危ないなというパンチはあったが、見えているなかでのタイミングだった。それも予測しないでもらったら効くなというのはある、タパレスが倒してきていたという理由もわかりますね」
 2団体統一王者のタパレスは簡単な相手ではなかった。
 だが、それ以上に井上が倒すのに手こずった真相が判明した。
 試合当日の体重は、井上が前日計量の55.2キロから「6キロ戻しの61.2、3キロだった」のに対して、タパレスは55.0キロから8キロ以上を増加させ、63キロを軽くオーバー。63.5キロがリミットのスーパーライト級の体重だったというのだ。
 確かに上背はないが、タパレスの肉体は、まるで鋼のように筋肉隆々で、井上よりも一回り大きく見えた。
 プロボクシングは、試合前日の午後1時の計量さえクリアすれば、翌日の試合までの水分補給や食事などのリカバリーは自由で体重を増やしても問題はない。実際のリングではスーパーバンタム級の同じ体重で試合が行われるわけではなく体重差が生まれる。IBFは、安全性から極端な体重増加を避けるために、当日計量を行い、増加幅に制限を設けているが、今回は、4団体統一戦だったため、IBFの当日計量は採用されなかった。
 井上の「61.2、3キロ」も階級で言えば、61.2キロがリミットのライト級に相当する体重だが、タパレスは、さらにひとつ上のスーパーライト級の体重だったのだ。おそらくタパレスは、試合後に「凄いパンチ力だった」と振り返ったほどの井上のパワーに対抗するために、わざと体重を増やし体をでかくしたのだろう。タパレスは、巧みなディフェンスでクリーンヒットは、ほぼ回避していた。だが、井上クラスの規格外の威力のパンチを受けるとガードの上からでもダメージは蓄積する。元々タフで打たれ強いファイターではあるが、その2キロの体重差が、さらなる耐久力につながり、10ラウンドまで生き延びたのである。 
 ある意味、それが「階級の壁」と言えるかもしれないが、スーパーバンタム級で、ここまで体重を戻すのは珍しい。スーパーライト級に相当するタパレスを見事に倒して見せたのだから、やはり井上は怪物。10ラウンドKO勝利を「苦戦」と評するのは間違っている。
 井上は次戦に向け「まだ体はでかくしていこうかな」という話をしていた。
 スーパーバンタム級初戦となったフルトン戦では、当日に61キロまで戻すはずが、60.1キロまでしか戻らなかった。今回は、その理想形まで戻した。
「無理して増やしたわけじゃなく、自然と体重が戻ってきた。ベストでした。スーパーバンタム級では、6キロを戻しで試合をしたことなかったので、どう感じるのかなと思うところはあったが、スピード、キレも落ちることなく、よりパワーに重心が乗るというか、いいリカバリーができた」との手ごたえがあったが、逆にタパレスの重さを肌で感じ、ベースのフィジカルを増強しておけば、まだ、もう少し当日の体重を戻せるという感触をつかんだのかもしれない。

 

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